テレモニタリング+薬剤師による管理で血圧改善/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2013/07/12

 

 患者の自宅からの家庭血圧テレモニタリングと薬剤師による血圧管理を組み合わせた降圧治療の有用性が、米国・HealthPartners Institute for Education and Research(ミネアポリス市)のKaren L Margolis氏らが行ったHyperLink試験で確認された。多くの有効な治療薬が開発されているにもかかわらず、米国では血圧が推奨値以下に管理されている成人高血圧患者は約半数にとどまる。最近の系統的レビューは、血圧の改善には診療体制を再編し、医師以外の医療従事者の主導で降圧治療の調整を行う必要があると結論づけており、遠隔治療と看護師、薬剤師主導のチーム医療を組み合わせた介入の有効性を示唆する研究結果もあるという。JAMA誌2013年7月3日号掲載の報告。

多彩な患者に対する効果をクラスター無作為化試験で評価
 HyperLink試験は、降圧治療における家庭血圧テレモニタリングと薬剤師による患者管理を組み合わせた介入の有用性を検証するクラスター無作為化試験。ミネアポリス市およびセントポール市の16のプライマリ・ケア施設が、介入を行う群(8施設)または通常治療を行う群(8施設)に無作為に割り付けられた。

 患者選択基準は収縮期血圧(SBP)≧140mmHgもしくは拡張期血圧(DBP)≧90mmHgとし、糖尿病や慢性腎臓病を併発する患者(基準値:SBP≧130mmHgもしくはDBP≧80mmHg)も含めた。介入群の患者は自宅で測定した家庭血圧のデータを薬剤師に送信し、薬剤師はデータに基づいて降圧治療の調整を行った。治療期間は1年であった。

 主要アウトカムは、治療開始から6ヵ月、12ヵ月時のSBP<140/DBP<90mmHg(糖尿病、慢性腎臓病を併発する場合はSBP<130/DBP<80mmHg)の達成とし、18ヵ月時(治療終了後6ヵ月)の血圧管理、患者満足度などの評価も行った。

塩分摂取制限や患者満足度も良好
 2009年3月~2011年4月までに介入群に228例、通常治療群には222例が登録された。全体の平均年齢は61.1歳、女性が44.7%、白人が81.8%で、平均SBPは147.9mmHg、平均DBPは84.7mmHgだった。また、このうち糖尿病が19.1%、慢性腎臓病は18.6%にみられた。

 主要アウトカムの治療開始6ヵ月時の達成率は、介入群71.8%、通常治療群45.2%(p<0.001)、12ヵ月時はそれぞれ71.2%、52.8%(p=0.005)、18ヵ月時は71.8%、57.1%(p=0.003)であり、いずれも介入群で有意に良好であった。

 6ヵ月と12ヵ月の両時点で主要アウトカムが達成された患者は介入群57.2%、通常治療群30.0%(p=0.001)、6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月のすべてで達成された患者はそれぞれ50.9%、21.3%(p=0.002)であり、有意な差が認められた。

 介入群のSBPは、ベースラインから治療開始6ヵ月時までに21.5mmHg低下し、12ヵ月時には22.5mmHg、18ヵ月時には21.3mmHg低下した。DBPの低下はそれぞれ9.4、9.3、9.3mmHgであった。通常治療群のSBPはそれぞれ10.8、12.9、14.7mmHg低下し、DBPは3.4、4.3、6.4mmHg低下した。

 SBPの低下は、いずれの時点でも介入群が有意に良好で、両群間の降圧の差は6ヵ月時が10.7mmHg(p<0.001)、12ヵ月時が9.7mmHg(p<0.001)、18ヵ月時は6.6mmHg(p=0.004)であった。DBPの低下も介入群が良好で、それぞれ6.0(p<0.001)、5.1(p<0.001)、3.0mmHg(p=0.07)の差が認められた。

 介入群では、降圧薬の種類の増加、服薬遵守、塩分摂取制限、患者満足度なども良好で、安全性も許容可能なものであった。

 著者は、「家庭血圧テレモニタリングと薬剤師による血圧管理を組み合わせた降圧治療は、通常治療に比べ降圧達成率が良好であり、効果は治療終了6ヵ月後も持続していた」とまとめ、「今後、費用対効果や長期効果が確かめられれば、このモデルは高血圧や他の慢性疾患の管理法として普及すると考えられる」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)

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コメンテーター : 桑島 巖( くわじま いわお ) 氏

J-CLEAR理事長

東都クリニック 高血圧専門外来