肺がんの低線量CT検診は、リスクが最も高い集団における肺がん死の予防に有効だが、低リスク集団では予防効果が低いことが、全米肺検診試験(NLST)で示された。米国・国立がん研究所のStephanie A Kovalchik氏らが、NEJM誌オンライン版2013年7月18日号で報告した。NLSTではすでに、低線量CTは胸部X線による検診に比べ、喫煙経験のある中高年者における肺がん死を20%抑制することが示されているが、肺がん死のリスク別の検討は行われていなかった。
リスク別の死亡率を五分位法で解析
NLSTの研究グループは、今回、肺がん死のリスク別の低線量CT検診の有用性を、従来の胸部X線検診と比較する無作為化試験を実施した。対象は、年齢55~74歳で、30 pack-years以上の喫煙者および禁煙後15年以内の元喫煙者であった。
5年肺がん死の推定リスクを五分位法で以下のように層別化し、各群における2002年8月~2009年1月15日の肺がんによる死亡率を解析した。第1五分位群(Q1、最低リスク群):0.15~0.55%、第2五分位群(Q2):0.56~0.84%、第3五分位群(Q3):0.85~1.23%、第4五分位群(Q4):1.24~2.00%、第5五分位群(Q5、最高リスク群):>2.00%。
1万人年当たりの予防数、最低リスク群0.2 vs 最高リスク群12.0
5万3,158例が登録され、低線量CT検診群に2万6,604例、胸部X線検診群には2万6,554例が割り付けられた。フォローアップ期間中央値は5.5年。
肺がん死数は低線量CT検診群が354例、胸部X線検診群は442例で、1万人年当たりの死亡数はそれぞれ24.6、30.9(率比:0.80、95%信頼区間[CI]:0.69~0.92、p=0.001)、低線量CT検診群における肺がん死の減少数は6.3/1万人年(95%CI:2.4~10.1、p=0.001)であった。
胸部X線検診群との比較における低線量CT検診群の1万人年当たりの肺がん死予防数は、肺がん死リスクが高くなるに従って上昇した(Q1:0.2、Q2:3.5、Q3:5.1、Q4:11.0、Q5:12.0、傾向p=0.01)。
検診で予防された肺がん死の偽陽性数(利益・不利益比)は、肺がん死リスクが高い群ほど低下した(Q1:1,648、Q2:181、Q3:147、Q4:64、Q5:65、傾向p<0.001)。
肺がん死リスクが高い上位60%(Q3~Q 5)が、検診で予防された肺がん死の88%を占め、偽陽性の64%を占めた。肺がん死リスクが最も低い20%(Q1)では、検診による肺がん死予防率は1%にすぎなかった。
著者は、「これらの知見は、リスク評価に基づいて喫煙者に的を絞った肺がん検診法の有用性を実証的に支持するもの」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)