2000年に米国で導入された7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)の小児への接種の効果について、肺炎関連入院の減少効果が、10年後も持続していることが、米国・ヴァンダービルト大学のMarie R. Griffin氏らによる調査の結果、報告された。また直接接種をしていない成人についても減少が認められ、とくに85歳以上高齢者について大幅な減少が確認されたという。米国においてPCV7の導入は、接種対象の若年小児以外にも年長小児や成人における“ワクチン血清型”の侵襲性肺炎球菌疾患の発生率を大幅に低下させた。2004年時点の調査では、若年小児のあらゆる肺炎関連入院が顕著に減少したことが確認されていた。しかし一方で増加が報告されていた“非ワクチン血清型”の侵襲性肺炎球菌疾患についての懸念から、PCV7導入の長期的効果および高齢者への効果についての評価が待たれていた。NEJM誌2013年7月11日号掲載の報告より。
PCV7ワクチン導入前1997~1999年と、導入後2007~2009年の年間肺炎入院率を比較
研究グループは、全米入院サンプルデータベースを用い、PCV7が小児ワクチンとして導入される前の1997~1999年と、導入後で十分に時間が経過した2007~2009年の、肺炎による入院の平均年間発生率を調べ、それを用いて肺炎による入院の年間減少率を推定し比較した。
肺炎が入院理由の第一診断名である場合と、第一診断名が敗血症、髄膜炎、膿胸で、それに次ぐ診断名が肺炎である場合の入院を、肺炎による入院と定義した。
85歳以上で年間10万人当たり1,300件減少、年間7万3,000件の入院減少に結びつく
その結果、2歳未満児の肺炎関連入院の年間発生率は、PCV7ワクチン導入前時期と比べて導入後10年時点では、10万人当たり551.1件(95%信頼区間:445.1~657.1)減少(1,274件から723件へ)、相対比で43.2%減少していた。導入前時期をベースに推算すると、年間約4万7,000件の入院減少に結びついていた。
また、85歳以上の肺炎関連入院の年間発生率も、10万人当たり1300.8件(同:984.0~1617.6)減少、相対比で22.8%減少し、年間7万3,000件の入院減少に結びついたと推計された。
さらに、18~39歳、65~74歳、75~84歳の3つの年齢グループではそれぞれ、10万人当たり8.4件、85.3件、359.8件減少した。
全体としては、PCV7導入後の肺炎関連入院の年間発生率は、年齢で補正後10万人当たり54.8件(同:41.0~68.5)減少し、年間16万8,000件の入院減少につながったと推計された。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)