高齢者の認知症リスクに世代間格差/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2013/08/02

 

 英国3地域で、1989~1994年と2008~2011年の認知症有病率を同一の方法で調べ、そのデータを基に同有病率の予測値を割り出したところ、最近の高齢者のほうが以前の高齢者に比べて認知症リスクが低いことが示された。英国・ケンブリッジ大学のFiona E Matthews氏らが行ったコホート研究の結果、報告された。認知症の有病率は世界的に関心が高く、将来のケア体制整備のためにも、同年齢の人がどれぐらい認知症になるかの推計が必要だが、英国においてはそのエビデンスは10年以上更新されていなかったという。そこで、1989年に始まった英国での認知機能と加齢についてのオリジナル研究「MRC CFAS」を基に、20年後に同一地域・同一方法で認知症有病率を調べ、同有病率に変化があったかを調べた。Lancet誌オンライン版2013年7月16日号掲載の報告より。

英国3地域で20年間の認知症有病率を調査
 MRC CFAS(Medical Research Council Cognitive Function and Ageing Study)は、1989~1994年にかけて、英国6地域で65歳以上を対象に認知症の有病率を予測したコホート研究だった(CFAS I)。研究グループは、そのうちケンブリッジシャー、ニューカッスル、ノッティンガムの3つの地域について、2008~2011年に同一方法で認知症有病率の予測値を調べ、両者の比較を行った(CFAS II)。

 いずれのCFASでも、被験者のスクリーニングを行ったうえで診断アセスメントを実施し、得られたデータを基に有病率の予測と比較を行った。

最近コホートの有病率予測、古いコホートより1.8ポイント低下
 CFAS Iの対象者は9,602人、そのうち回答のあった被験者は7,635人で、実際に診断アセスメントを受けたのは1,457人だった。CFAS IIは1万4,242人を対象に調査を行い、そのうち回答があり調査可能だった被験者は7,796人だった。

 CFAS Iを基に2011年標準化人口に対して算出した65歳以上の年齢・性特異的認知症有病率の予測値は、8.3%(88万4,000人)だった。一方、CFAS IIを基にした同有病率の予測値は6.5%(67万人)で、1.8ポイント低かった(CFAS II予測値のCFAS I予測値に対するオッズ比:0.7、同:0.6~0.9、p=0.003)。

 感度分析の結果、被験者の回答率にかかわらず、同様の結果が得られることが示された。

 研究グループは、「本研究において、認知症有病率にはコホートの影響が認められるというさらなるエビデンスが示された。20世紀生まれの高齢者については、よりあとに生まれた人のほうが、より早くに生まれた人よりも認知症リスクが低いことが示された」と結論している。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)