滲出型加齢黄斑変性の治療において、ラニビズマブ(商品名:ルセンティス)とベバシズマブ(同:アバスチン、わが国では加齢黄斑変性に対しては未承認)の効果に差はないことが、IVAN試験の2年間の追跡結果により示された。英国・クイーンズ大学ベルファストのUsha Chakravarthy氏らが、Lancet誌オンライン版2013年7月19日号で報告した。本症の治療ではラニビズマブが標準とされるが、ベバシズマブも同等の効果を持つ可能性が示唆されている。ベバシズマブは医療コストの面で優れるが、安全性に課題が残るとされている。
2×2ファクトリアル・デザインの非劣性試験の2年データ
英国で実施されたIVAN試験は、2つの血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬の、滲出型加齢黄斑変性に対する有用性を評価する2×2ファクトリアル・デザインの無作為化非劣性試験。米国でも同様の試験(CATT試験)が進行中で、すでに両試験の1年間の追跡データのプール解析の結果が報告されている。
対象は、50歳以上の未治療の滲出型加齢黄斑変性患者で、標準視力表で最高矯正視力(BCVA)が25文字以上の患者であった。参加者は、ラニビズマブ(0.5mg)またはベバシズマブ(1.25mg)を毎月1回、硝子体内投与する群(継続投与群)、それぞれ月1回の臨床評価に基づき必要に応じて随時頓用する群(随時投与群)の4群に無作為に割り付けられた。
有効性の主要評価項目は2年時のBCVAで、非劣性の限界値を3.5文字とした。安全性の主要評価項目は動脈血栓イベントおよび心不全による入院であった。
死亡率は継続投与群が良好
2008年3月27日~2010年10月15日までに、英国の23施設から610例が登録され、ラニビズマブ群に314例、ベバシズマブ群には296例が割り付けられた。このうち2年間の追跡を完遂したのは525例で、ラニビズマブ群271例(継続投与群134例、随時投与群137例)、ベバシズマブ群254例(継続投与群127例、随時投与群127例)であった。
ベバシズマブ群の有効性はラニビズマブ群に対し非劣性でも劣性でもなかった(BCVAの平均差:-1.37文字、95%信頼区間[CI]:-3.75~1.01、p=0.26)。また、随時投与群は継続投与群に対し非劣性でも劣性でもなかった(-1.63文字、-4.01~0.75、p=0.18)。
動脈血栓イベントおよび心不全による入院の発生率は、ラニビズマブ群が6%(20/314例)、ベバシズマブ群は4%(12/296例)であり、両群間に差はなかった(オッズ比[OR]:1.69、95%CI:0.80~3.57、p=0.16)。同様に、継続投与群での発生率は4%(12/308例)、随時投与群は7%(20/302例)であり、やはり有意な差は認めなかった(0.56、0.27~1.19、p=0.13)。
死亡率は継続投与群が随時投与群よりも低かった(OR:0.47、95%CI:0.22~1.03、p=0.05)が、薬剤間の差はみられなかった(0.96、0.46~2.02、p=0.91)。
これらの結果は、ラニビズマブとベバシズマブの効果の同等性を示唆するものであり、さらに、今回のIVAN試験とCATT試験の2年間のデータのプール解析を行ったところ、ベバシズマブの有用性はラニビズマブに劣らないことが示された。
著者は、「滲出型加齢黄斑変性の治療におけるVEGF阻害薬の選択はこれまで考えられていたほど単純ではない」と指摘し、「死亡率が低く、臨床評価を必要としない継続投与のほうが好ましいと考えられるが、ラニビズマブを選択した場合は、公的医療機関では医療費を負担しきれない可能性がある。また、継続投与は、死亡リスクは低いが地図状萎縮のリスクが高い。このトレードオフについて患者とよく話し合うべきである」と考察を加えている。
(菅野守:医学ライター)