プライマリ・ケア医に対しインターネットを利用した気道感染症治療に関する2つの研修を行うことで、抗菌薬の処方率が大幅に抑制されることが、英国・サザンプトン大学のPaul Little氏らGRACEコンソーシアムの検討で示された。プライマリ・ケアにおける大量の抗菌薬処方は、薬剤耐性の重大な促進要因とされる。処方は医師や患者への教育によって低下する可能性があるが、高度に訓練された教育担当員を要する場合が多いことから、簡便で効果的な研修法の開発が望まれている。Lancet誌オンライン版2013年7月31日号掲載の報告。
クラスター無作為化試験で4群を比較
GRACEコンソーシアムは、インターネットを利用した気道感染症治療関連の研修法を開発し、その抗菌薬処方に対する効果を評価するために、国際的なクラスター無作為化試験を実施した。
欧州6ヵ国のプライマリ・ケア施設が、通常治療群、医師に対しC反応性蛋白(CRP)検査の研修を行う群、コミュニケーション技法の向上を目的とした研修を行う群、2つの研修の両方を行う群の4群に無作為に割り付けられた。
2010年10~12月に、割り付け前のベースライン調査が行われた。259施設に登録された6,771例[下気道感染症5,355例(79.1%)、上気道感染症1,416例(20.9%)]のうち3,742例(55.3%)に抗菌薬が処方されていた。
両方の研修を行うのが最も効果的
2011年2~5月に、246施設を4群に無作為に割り付け、そのうち228施設(92.7%、医師372人)に登録された4,264例がフォローアップの対象となった。内訳は、通常治療群が53施設(870例)、CRP検査研修群が58施設(1,062例)、コミュニケーション技法研修群が55施設(1,170例)、CRP検査+コミュニケーション技法研修群は62施設(1,162例)であった。
抗菌薬処方率はCRP検査研修群が33%であり、CRP検査研修を行わなかった群の48%に比べ有意に低下した(調整リスク比:0.54、95%信頼区間[CI]:0.42~0.69、p<0.0001)。また、コミュニケーション技法研修群の処方率は36%と、コミュニケーション技法研修を行わなかった群の45%に比し有意に低下した(同:0.69、0.54~0.87、p<0.0001)。
抗菌薬処方率は、両方の研修を行ったCRP検査+コミュニケーション技法研修群が最も低く、リスク比は0.38(95%CI:0.25~0.55、p<0.0001)であった。
著者は、「プライマリ・ケア医に対するインターネットによる2つの簡便な研修は、いずれも抗菌薬処方の抑制に有効で、両方の研修を行った場合に最も高い有効性が示された」とまとめ、「このような母国語や文化的な境界を超えた介入が大きな成果を上げたことは、これらの介入が多くの保健システムにおいて広く実行可能であることを示唆する」としている。
(菅野守:医学ライター)