脳室内出血のない特発性テント上脳内出血への早期手術によるアウトカム改善について検討したSTICH IIの結果が、英国・ニューカッスル大学のA David Mendelow氏らにより報告された。大きな改善は示されなかったが、臨床関連の生存アドバンテージがある可能性が示されたという。同患者への早期手術によるリスクとベネフィットの釣り合いについては、これまで明らかにされておらず、STICH IIにおいて初期保存療法との比較で検討が行われた。Lancet誌2013年8月3日号(オンライン版2013年5月29日号)掲載の報告より。
早期手術群と初期保存療法群で比較
STICH IIは、これまで明らかになっていない、脳室内出血のない10~100mL量の表層性脳内出血で発作後48時間以内に入院した意識下患者への、早期手術介入のリスクとベネフィットの釣り合いを検討することを目的とした。試験は、同患者について初期保存療法と比べて早期手術はアウトカムを改善すると仮定して行われた、国際並行群間無作為化試験であった。
研究グループは、27ヵ国78施設にて、無作為化後12時間以内の早期血腫除去術+薬物療法を行った患者と、初期薬物療法単独群(その後に必要であると判断されれば血腫除去術を施行)を比較した。患者の割り付け(1対1)は、電話とインターネットベースの自動無作為化サービスにて行い、試験に関する情報はマスキングされなかった。
主要アウトカムは、6ヵ月時点で患者に質問票を送付して得られた予測ベースの二分アウトカム(良好か不良)だった。評価は、8ポイントの拡張版グラスゴーアウトカムスケール(GOSE)で行われた。解析は、intention to treatであった。
6ヵ月時点の死亡、障害スコア増大せず
被験者601例のうち、307例が早期手術群に、294例が初期保存療法群に無作為化された。6ヵ月時点の追跡評価はそれぞれ298例、291例が受け、そのうち297例、286例が解析に組み込まれた。
解析の結果、アウトカムが不良であったのは、早期手術群で174/297例(59%)だったのに対し、初期保存療法群は178/286例(62%)であった(両群の絶対差:3.7%、95%信頼区間[CI]:-4.3~11.6/オッズ比[OR]:0.86、95%CI:0.62~1.20、p=0.367)。
6ヵ月時点の死亡率は、早期手術群18%、初期保存療法群24%だった(OR:0.71、95%CI:0.48~1.06、p=0.095)。
これらの結果を踏まえて著者は、「STICH II試験の結果、脳室内出血のない特発性表層性脳内出血への早期手術は、6ヵ月時点の死亡や障害を増大せず、わずかだが臨床関連の生存アドバンテージがある可能性が確認された」と結論している。
(武藤まき:医療ライター)