僧帽弁尖動揺による僧帽弁逆流を呈する慢性僧帽弁閉鎖不全症の患者に対し、早期に僧帽弁手術を実施する治療戦略は初期薬物療法による経過観察戦略と比較して、長期生存率の増大および心不全リスクの低下に関連していることが示された。米国・メイヨークリニック医科大学のRakesh M. Suri氏らが、1,000例を超える多施設共同レジストリデータの分析の結果、報告した。クラスIトリガー(心不全または左室機能不全)を有さない重症僧帽弁閉鎖不全症患者の至適治療については、現状の治療戦略の長期結果の定義が曖昧なこともあり、なお議論の的となっている。同検討に関する臨床試験データはなく、それだけに今回の検討は重大な意味を持つところとなった。JAMA誌2013年8月14日号掲載の報告より。
4ヵ国6施設1,021例を10.3年追跡
Mitral Regurgitation International Database(MIDA)レジストリデータの分析は、僧帽弁尖動揺による僧帽弁閉鎖不全症と診断後の、初期薬物治療(手術を行わず経過観察)と早期僧帽弁手術治療の有効性の比較を確認することを目的とした。MIDAには、1980~2004年に6つの高度医療施設(フランス、イタリア、ベルギー、米国)でルーチンの心臓治療を受けた同連続患者2,097例が登録されていた。平均追跡期間は10.3年で、98%が追跡を完了した。
検討は、1,021例のACCおよびAHAガイドラインのクラスIトリガーを有さない僧帽弁閉鎖不全症患者について行われ、575例が初期薬物治療を、446例が診断後3ヵ月以内に僧帽弁手術を受けていた。
主要評価項目は、治療戦略と生存率、心不全および新規の心房細動発症との関連だった。
長期生存率は有意に増大、心不全リスクは有意に低下
診断後3ヵ月時点において、早期手術群と初期薬物治療群の間に、早期死亡(1.1%対0.5%、p=0.28)、新規の心不全発症(0.9%対0.9%、p=0.96)の有意差はみられなかった。
一方で、長期生存率は早期手術群で有意に高かった(10年時点で86%対69%、p<0.001)。同関連は、補正後モデル(ハザード比[HR]:0.55、95%信頼区間[CI]:0.41~0.72、p<0.001)、32の変数による傾向マッチコホート(同:0.52、0.35~0.79、p=0.002)、逆確率ウエイト(inverse probability-weighted:IPW)解析(同:0.66、0.52~0.83、p<0.001)でも確認され、5年時点の死亡率は52.6%有意に低下した(p<0.001)。同様の結果は、クラスIIトリガーを有したサブセット群の解析でもみられた(5年時点死亡率59.3%低下、p=0.002)。
また、長期の心不全リスクも、早期手術群で低下した(10年時点7%対23%、p<0.001)。リスク補正後モデル(HR:0.29、95%CI:0.19~0.43、p<0.001)、傾向マッチコホート(同:0.44、0.26~0.76、p=0.003)、IPW解析(同:0.51、0.36~0.72、p<0.001)でも確認された。
なお、心房細動の新たな発症の減少は、観察されなかった(HR:0.85、95%CI:0.64~1.13、p=0.26)。