転移性腎細胞がん、2つのTKIの有効性に差なし/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2013/08/30

 

 転移性腎細胞がんの1次治療において、パゾパニブ(商品名:ヴォトリエント、腎細胞がんへの適応拡大申請中)の有効性はスニチニブ(同:スーテント)に劣らず、安全性やQOLはパゾパニブがより良好なことが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのRobert J Motzer氏らが実施したCOMPARZ試験で示された。腎細胞がんは腎がんの中で最も高頻度にみられ、診断時には最大30%が転移性と報告されている。パゾパニブとスニチニブはいずれも経口チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)であり、転移性腎細胞がんの治療において無増悪生存期間(PFS)の改善効果が確認されていた。NEJM誌2013年8月22日号掲載の報告。

2つのTKIを非劣性試験で評価
 COMPARZ試験は、転移性腎細胞がんの1次治療におけるパゾパニブおよびスニチニブの有用性を評価する非盲検無作為化第III相試験。年齢18歳以上で未治療の転移性淡明細胞型腎細胞がん患者を対象とした。

 被験者は、パゾパニブ800mgを1日1回投与する群またはスニチニブ50mgを1日1回、4週投与後2週休薬する群に無作為に割り付けられた。治療は、病態の進行(PD)、許容されない毒性の発現、患者が治療中止を希望するまで継続することとした。

 主要評価項目はPFS(無作為割付日から初回PDまたは全死因による死亡までの期間)とした。Cox比例ハザードモデルを用いたPFSのハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)上限値が1.25(非劣性マージン)未満の場合に非劣性と判定することとした。

IR判定ORRには有意差、安全性・QOLにも差を認める
 2008年8月~2011年9月までに14ヵ国から1,110例が登録され、パゾパニブ群に557例が、スニチニブ群には553例が割り付けられた。それぞれ5例、3例が実際には治療を受けなかった。2012年5月のデータカットオフの時点で両群とも88%の患者が治療を中止していた。

 PFS中央値はパゾパニブ群が8.4ヵ月、スニチニブ群は9.5ヵ月で、HRは1.05、95%CIは0.90~1.22と非劣性マージンを満たしたため、有効性に関するパゾパニブのスニチニブに対する非劣性が確認された。

 独立評価委員会(IR)判定による完全奏効(CR)が、パゾパニブ群1例、スニチニブ群3例、部分奏効(PR)はそれぞれ170例、134例で得られた。客観的奏効率(ORR)はパゾパニブ群31%、スニチニブ群25%であり、有意差がみられた(p=0.03)。治験担当医判定のORRには差を認めなかった(33 vs 29%、p=0.12)。全体で502例が死亡し、全生存期間(OS)中央値はパゾパニブ群が28.4ヵ月、スニチニブ群は29.3ヵ月であり、両群間に差はなかった(HR:0.91、95%CI:0.76~1.08、p=0.28)。

 パゾパニブ群に比べスニチニブ群で多かった有害事象として、疲労感(63 vs 55%)、手足症候群(50 vs 29%)、血小板減少(78 vs 41%)が挙げられ、パゾパニブ群で高頻度の有害事象としてはアラニン・アミノトランスフェラーゼ(ALT)上昇(60 vs 43%)が認められた。

 治療6ヵ月の時点で、14項目の健康関連QOLのうち11項目のスコアがパゾパニブ群で有意に優れていた。とくに、疲労感(FACIT-F、p<0.001)、口内・喉の強い痛み(SQLQ、p<0.001)、手の強い痛み(同、p=0.002)、足の強い痛み(同、p=0.001)がパゾパニブ群で良好であった。医療資源の利用のうち電話相談件数(p=0.04)や救急診療部受診(p=0.003)がパゾパニブ群で有意に少なかった。

 著者は、「パゾパニブの有効性はスニチニブに劣らず、安全性やQOLはより良好であった」とまとめ、「1次治療の選択肢として有効性に差がない場合は、安全性プロフィールや健康関連QOL、医療資源の利用状況を重視すべきと考えられる」としている。