米国・北カリフォルニア・カイザーパーマネンテ(KPNC)が2001年に開発導入した、大規模集団高血圧プログラムの実施状況を分析した報告が、KPNC南サンフランシスコメディカルセンターのMarc G. Jaffe氏らにより発表された。2009年時点の分析で、州や国が行うプログラムに比べると、KPNC高血圧プログラム下で血圧コントロールを受ける高血圧患者の割合は有意に増大したことが示されたという。Jaffe氏は本報告で、同プログラム開発の経緯と変遷、プログラムのキー要素について報告している。JAMA誌2013年8月21日号掲載の報告より。
高血圧コントロール率について、州および全米とで比較
KPNCは非営利の総合医療サービス提供機構で、21の病院と45の関連医療施設を有し7千人超の医師が230万人以上の加入者に医療サービスを提供している。同組織が2001年に高血圧プログラムを開発した背景には、当時、50歳以上の患者に有効な高血圧治療があるにもかかわらず、血圧コントロールを受けている人は半数以下という状況があり、質的改善を図った高血圧プログラムを開発した。新たなプログラムは、多面的アプローチで血圧コントロールを図ることを特徴とするものであった。
本検討では、同プログラムの実施状況を評価するため、高血圧コントロール率の変化を調べ、また、カリフォルニア州および全米の同値と比較した。評価は、全米品質保証委員会(NCQA)の認証評価ツール(HEDIS)によって同率を測定したNCQA HEDISコマーシャル率で行った。
実施状況を有意に増大したプログラムのキー要素
KPNCの高血圧レジストリ患者数は、2001年の開設時は34万9,937例であったが、2009年には65万2,763例へと増加していた。登録者の平均年齢は63歳、45~85歳が大半を占め、半数以上が女性であり、糖尿病を有している人が多くみられ有病率は2001年25.6%から2009年28.5%に増えていた。
そうした中で、NCQA HEDISコマーシャル率でみた、KPNCの高血圧コントロール率は、2001年43.6%(95%信頼区間[CI]:39.4~48.6%)から2009年80.4%(同:75.6~84.4%)へと有意に増大していた(傾向のp<0.001)。なお、2010年83.7%、2011年87.1%と同率はさらに上昇しているという。
対照的に、同一期間中の全米の同値は、55.4%から64.1%への増加で有意性はみられなかった(傾向のp=0.24)。カリフォルニア州について入手できた同値は2006~2009年の変遷であったが、同様に増加は有意ではなかった(63.4%から69.4%へ増加、p=0.37)。
これらの結果を踏まえて著者は「大規模集団プログラムの実施状況は、州や国のコントロール率と比べると有意な増大が認められた」と報告。プログラムのキー要素として、総合的な高血圧レジストリの設定(2001年)、NCQA HEDISに即したパフォーマンス測定基準の開発・共有(2001年)、エビデンスベースのガイドライン(4ステップの血圧コントロールアルゴリズム、2001年に開発し2年ごとにアップデート)、医療補助者(medical assistant)によるフォローアップ訪問(2007年より、薬物療法後2~4週後に訪問して血圧を測定、医師に報告しその後の治療方針を作成するシステムで、患者への追加料金なし)、合剤治療の推進(2005年より、リシノプリル/ヒドロクロロチアジド合剤推奨を治療開始時のオプションまたはステップ2の治療戦略としてガイドラインに明記)などを挙げている。
(武藤まき:医療ライター)
Jaffe MG et al. Improved Blood Pressure Control Associated With a Large-Scale Hypertension Program. JAMA. 2013 Aug 21;310(7): 699-705.