妊産婦と子どもの死亡の97%を占める68ヵ国において、ミレニアム開発目標(MDG)の4(2015年までに5歳児未満の死亡率を1990年の1/3に削減)およびMDG5(妊産婦の死亡率を1/4に削減)の進捗状況を調査したところ、いずれも順調に進んでいるとはいえないことが明らかとなった。“Countdown to 2015 for Maternal, Newborn, and Child Survival”構想は、MDG4とMDG5の達成に向けた優先的な介入法の実施状況の評価を目的とする。運営組織であるCountdown to 2015 Core Groupの研究班がLancet誌2008年4月12日号で報告した。
死亡率が高い国と介入法を選定し、追跡調査した
研究グループは、妊産婦と子どもの死亡率が高い国とその死亡率を低下させる可能性の高い介入法を選定し、国ごとの死亡に関するデータと介入法の実施状況を解析した。
死亡原因のプロフィール、栄養状態の指標、支持的な施策の有無、妊産婦・新生児・子どもの死亡に対する対策への資金投入、介入の実施状況について追跡調査が行われた。
MDG4の進捗が順調な国は24%すぎず、MDG5はデータが不十分
選定された68の優先国のうち、MDG4の達成に向け順調に進んでいるのは16ヵ国(24%)のみであった。そのうち7ヵ国はCountdown構想が始動した2005年には軌道に乗っており、2008年に「順調」のカテゴリーに加えられたのは中国を含む3ヵ国、残りの6ヵ国は2008年に初めてCountdown構想に選ばれた国である。
今回の調査では、MDG5の進展を示す妊産婦死亡率の傾向に関する十分なデータは得られなかったが、68ヵ国中56ヵ国(82%)では妊産婦死亡率は「高い」あるいは「きわめて高い」であった。
個々の介入法の実施状況は、各国間および国内でばらつきが大きかった。ルーチンに予定を立てることが可能な介入法(予防接種、妊娠管理など)は、機能的な医療システムや24時間体制の医療サービスに依存する介入法(高い技術を要する出産時の緊急ケア、罹病状態で出生した新生児や病気の子どものケアなど)に比べ、実施状況がはるかに良好であった。
68ヵ国のほとんどにおいて、産後ケアのデータは得られないか、調査状況が不十分であった。もっとも迅速な進歩が見られたのは予防接種であり、調査期間中に多くの投資を受けていた。
報告を行ったCountdown Coverage Writing Groupは、「MDG4、5の達成に向けた迅速な進展は可能だが、実施できることとなすべきことは、なお多く残されている」との見解を示し、「特に、避妊、出産ケア、産後ケア、罹病新生児や病気の子どもの臨床管理などの優先事項の実施状況を改善するには、集中的な取り組みが必要とされるだろう」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)