冠動脈疾患を有する高血圧前症患者へのレニン阻害薬アリスキレン(商品名:ラジレス)投与はプラセボと比較して、アテローム性動脈硬化の進展を抑制しないことが、南オーストラリア健康・医療研究所(SAHMRI)のStephen J. Nicholls氏らによる無作為化試験AQUARIUSの結果、示された。著者は、「今回の結果は、アテローム性動脈硬化症の退縮または予防についてアリスキレン使用を支持しないものであった」と結論している。JAMA誌オンライン版2013年9月3日号掲載の報告より。
アリスキレン300mg/日またはプラセボを104週間投与
アテローム性動脈硬化症では、血圧降下とレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)阻害が治療目標となる。一方、動脈硬化の進展に対するレニン阻害の効果はこれまで検討されていなかったことから、アリスキレンとプラセボを比較検討する本試験が行われた。
AQUARIUS(Aliskiren Quantitative Atherosclerosis Regression Intravascular Ultrasound Study)は前向き多施設共同二重盲検法にて2009年3月~2011年2月に、ヨーロッパ、オーストラリア、南北アメリカの103施設で被験者を募って行われた。
被験者は、冠動脈疾患、高血圧前症(収縮期血圧125~139mmHg)、2つ以上の心血管リスク因子(心筋梗塞等の既往歴あり、尿中アルブミン/クレアチニン比30~300mg/g、2型糖尿病など9因子のうち)を有する613例であった。冠動脈血管内超音波法(IVUS)検査による画像診断を受け、305例がアリスキレン300mg/日の経口投与を、308例がプラセボをそれぞれ104週間投与された。
治療72週以降にIVUS検査を行い、疾患進行について評価を行った。主要有効性指標は、アテローム容積率(PAV)のベースラインから試験終了までの変化とし、副次有効性指標は、標準化総アテローム容積(TAV)の変化およびアテロームが退縮した患者の割合などが含まれた。安全性および忍容性も評価された。
主要有効性指標PAV、副次有効性指標TAVともに有意差がみられず
ベースラインと追跡調査時の画像診断データが入手できたのは、458例(74.7%、アリスキレン群は225例)であった。
主要有効性指標のPAVは、両群間で有意差はみられなかった。アリスキレン群-0.33%(95%信頼区間[CI]:-0.68~0.02%)、プラセボ群0.11%(同:-0.24~0.45%)で群間差は-0.43%(同:-0.92~0.05%、p=0.08)だった。
副次有効性指標のTAVも差がみられなかった。アリスキレン群-4.1m
3(95%CI:-6.27~-1.94m
3)、プラセボ群-2.1m
3(同:-4.21~0.07m
3)で群間差は-2.04m
3(同:-5.03~0.95m
3、p=0.18)だった。
PAV、TAVの改善を示した患者の割合も両群間で有意差はなかった。PAV(アリスキレン群56.9%対プラセボ群48.9%、p=0.08)、TAV(同:64.4%対57.5%、p=0.13)だった。
有害事象については、低血圧症(同:7.2%対3.9%、p=0.04)、腎および尿路障害(6.9%対4.9%、p=0.38)の発生(試験担当者が報告)が、プラセボ群よりもアリスキレン群のほうがより多くみられる傾向があった。高カリウム血症(≧5.5mEq/L)の発生は、両群で同程度だった(アリスキレン群10.7%対プラセボ群9.8%、p=0.76)。なお有害事象による試験中断はアリスキレン群のほうが多かった(同:8.2%対4.5%)。
(武藤まき:医療ライター)