2004年に発売された「ニコチン入り電子タバコ」は、数百万人の愛煙家がいるとされ、やめるために吸っている人も多く(英国では禁煙に取り組む人の27%が利用)、10年以内にその売上高は一般的なタバコを凌駕するのではと言われるほど急増しているという。しかし、喫煙コントロールにおける電子タバコの位置づけには議論の余地があり、信頼性の高いデータも不足しているのが現状である。そこでニュージーランド・オークランド大学のChristopher Bullen氏らは、ニコチン入り電子タバコの有効性と安全性について評価するプラグマティックな無作為化対照優越性試験を行った。Lancet誌オンライン版2013年9月9日号の掲載報告より。
6ヵ月時点の禁煙継続を評価
研究グループは、禁煙セッションにおいて、ニコチン入り電子タバコは、ニコチンパッチおよびプラセボ(ニコチンなし電子タバコ)よりも禁煙補助剤として有効であり、有害イベントリスクも増大しないと仮定して検討を行った。
試験は2011年9月6日~2013年7月5日に、オークランドにおいて、18歳以上の禁煙希望者を対象に行われた。被験者は、コンピュータブロック無作為化にて、電子タバコ(16mgニコチン入り)群、ニコチンパッチ(21mg/日)群、プラセボ(ニコチンなし電子タバコ)群の3群に、4対4対1の割合で割り付けられた[人種(マオリ、パシフィック、非マオリ・パシフィック)、性(男、女)、ニコチン依存度(FTNDテストで>5、≦5)により9ブロックに層別化されて割り付けられた]。各補助剤の使用は、被験者が喫煙をやめると選択した日の1週間前から始め、選択日から12週間後まで使用した。また被験者には、行動を後押しするボランティアによる電話カウンセリングの支援が行われた。
主要アウトカムは、6ヵ月時点の生化学検査(呼気NO値<10ppm)に基づく禁煙の継続であった。評価はintention to treat(ITT)解析にて行われた。
電子タバコの有効性はわずか、さらなる研究が必要
1,293例が試験適格の評価を受け、657例が無作為化され(電子タバコ群289例、パッチ群295例、プラセボ群73例)、ITT解析に組み込まれた。
結果、6ヵ月時点で禁煙していた人は、電子タバコ群7.3%(21/289例)、パッチ群5.8%(17/295例)、プラセボ群4.1%(3/73例)であった。
事後解析にて行った有効性に関する非劣性試験(リスク差限界値5%)の結果、電子タバコ群とパッチ群のリスク差は1.51(95%信頼区間[CI]:-2.49~5.51)、電子タバコ群とプラセボ群の同差は3.16(同:-2.29~8.61)で統計的有意差は認められなかった。
なお試験の結果について著者らは「禁煙達成率が推定値(20%)よりもかなり低かった。そのため電子タバコの優位性を検討するには統計的検出力が不十分であった」と述べている。推定値に近かったのは7日間禁煙達成率(過去7日間禁煙できていた人の割合)で、相対リスクは電子タバコを支持する差を示したが、6ヵ月時点で有意差は示されなかった。また、被験者の大半は期間中央値50日以内に再喫煙に至っていた。群別では、電子タバコ群は同35日、パッチ群同14日、プラセボ群同12日だった。
有害イベントの発生は、電子タバコ群137例、パッチ群119例、プラセボ群36例で有意差は特定できず、有害イベントと各試験補助剤との関連エビデンスは見いだせなかった。
以上を踏まえて著者は、「禁煙補助剤として、ニコチン入り・なしを問わず電子タバコの有効性はわずかであった。禁煙達成率はニコチンパッチと同程度であった。有害イベントは少なかった」と結論した。そのうえで「喫煙コントロールにおける電子タバコの位置づけは不確定であり、個人および集団レベルでの有用性と有害性を明白に確立するためのさらなる研究が急務である」とまとめている。
(武藤まき:医療ライター)