心原性ショックを伴う急性心筋梗塞への大動脈内バルーンパンピング(IABP)は、12ヵ月後の死亡率を低減しないことが明らかにされた。ドイツ・ライプツィヒ大学のHolger Thiele氏らが、患者600例を対象とした非盲検無作為化比較試験「IABP-SHOCK II」の結果、報告した。すでにIABP-SHOCK IIの結果として、IABPによる30日死亡率の低下が認められないことが示されていた。しかし心原性ショックの先行研究において、延長フォローアップにおいてのみ死亡率のベネフィットが示されたことがあり、著者らは本試験についても6、12ヵ月の評価を行った。なお、最新の国際ガイドラインでは、レジストリデータに基づき心原性ショックを伴う急性心筋梗塞へのIABPの推奨ランクは引き下げられている。Lancet誌オンライン版2013年9月2日号掲載の報告より。
被験者の年齢中央値は70歳、約7割が男性
IABP-SHOCK II試験は、ドイツ国内36施設にて2009年6月16日~2012年3月3日の間に行われた。試験では、心原性ショックの合併症を有する急性心筋梗塞患者で早期血行再建術と適切な薬物療法が予定されている600例を無作為に2群に分け、一方にはIABPを(301例)、もう一方の群(299例)には対照治療を行った。
治療効果に関する主要エンドポイントは30日全死因死亡率だったが、加えて、6ヵ月後、12ヵ月後の生存者の生活の質(QOL)についてEuroqol-5Dを用いて評価した。
被験者の年齢中央値は70歳(四分位範囲:58~77)で、69%が男性だった。
12ヵ月死亡率はIABP群52%、対照群51%、その他のアウトカムも有意差示されず
12ヵ月の追跡を完了した595例(99%)のうち、死亡はIABP群52%(155例)、対照群51%(152例)で、両群に有意差はなかった(相対リスク比[RR]:1.01、95%信頼区間[CI]:0.86~1.18、p=0.91)。
再梗塞(RR:2.60、95%CI:0.95~7.10、p=0.05)、血行再建術(同:0.91、0.58~1.41、p=0.77)、脳卒中(同:1.50、0.25~8.84、p=1.00)のいずれについても、両群間に有意な差はなかった。
また、生存者に対して行われた、運動能、痛み・苦痛、不安またはうつ症状などを含むQOL評価も両群で有意差はなかった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)