骨盤放射線治療後に慢性的な胃腸症状を有する患者に対し、専門医や看護師がアルゴリズムに基づく治療を行うことで、6ヵ月後の症状がより大幅に改善することが明らかにされた。王立マーズデンNHS財団トラストH. Jervoise N. Andreyev氏らが、200例超について行った無作為化比較試験の結果、報告した。過去30年でがん生存者は3倍に増大したが、生存者の20~25%がQOLにおいて、がん治療の身体的悪影響を被っているという。慢性的な胃腸症状は骨盤放射線治療後の患者で頻度が高く、日常生活にも重大な影響を及ぼしている。Lancet誌オンライン版2013年9月23日号掲載の報告より。
専門医、看護師がそれぞれアルゴリズムに基づき治療
Andreyev氏らは、骨盤放射線治療を受けた後、新たに6ヵ月以上継続する胃腸症状を発症した18歳以上、218例について、無作為化対照試験を行った。被験者を無作為に3群に分け、一群には通常の治療(68例)、二群にはアルゴリズムに基づく消化器専門医による治療(70例)、三群にはアルゴリズムに基づく看護師による治療(80例)を、それぞれ実施した。通常ケア群の被験者には、自助的ガイドブックを配布した。
主要エンドポイントは、治療開始から6ヵ月後の、炎症性腸疾患質問票の腹部に関するスコア(IBDQ-B:Inflammatory Bowel Disease Questionnaire-Bowel subset score)の変化だった。
アルゴリズム群、6ヵ月のIBDQ-Bスコア改善幅が通常治療群に比べ有意に増大
被験者のうち男性は75~79%と大部分を占め、年齢中央値は男性が70歳、女性は61歳だった。被験者のほとんどが、IBDQ-Bスコアではベースライン時に中程度から重度の症状を示していた。
6ヵ月後の平均格差について比較したところ、通常治療群と看護師群では、4.12(95%信頼区間:0.04~8.19、p=0.04)、通常治療群と専門医群では5.47(同:1.14~9.81、p=0.01)と、いずれもアルゴリズムを活用することで患者の症状は大きく改善した。
なお、看護師群のアウトカムは、専門医群に対して非劣性だった(平均格差:1.36、95%片側信頼区間:1.48)。
結果を踏まえて著者は、「放射線治療による胃腸症状改善について、通常治療を受けた患者よりもアルゴリズムに基づく治療を受けた患者のほうが良好な改善を呈した。今回の結果は、大半の患者は、訓練を受けた看護師によるアルゴリズムベースの治療で症状の改善を図ることが可能であることを示唆するものだ」と結論している。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)