デンマークにおいて、バイスタンダー(居合わせた人、発見者など)による心肺蘇生(CPR)戦略の導入効果について、初となる評価が行われた。コペンハーゲン大学ゲントフテ病院のMads Wissenberg氏らによる調査検討の結果、2001~2010年の院外心停止後生存者は、バイスタンダーCPRの実施の増加と有意に関連していることが明らかになったという。JAMA誌2013年10月2日号掲載の報告より。
過去10年の、バイスタンダー蘇生実施率と生存率の変化を調査
デンマークで導入されたバイスタンダーCPR戦略は、(1)蘇生法訓練の小学校(2006年10月)および運転免許取得者(2005年1月)への実施導入、(2)CPR自己訓練キットを2005~2010年で約15万個配布、(3)バイスタンダーへの救急センターからの電話ガイダンス改善(2009年からの救急センターへの医療従事者の配置開始含む)、(4)病院外へのAED配置増(2011年までに約1万5千台)、(5)ガイドライン改訂(2004年に低体温治療開始など)や早期血行再建術への着目増大による高度ケアへの改善努力、(6)救急隊員の訓練などEMSシステムの全体的強化などであった。
研究グループは、これら戦略導入が行われた過去10年間のバイスタンダーによる蘇生実施率と生存率の変化について、全国デンマーク心停止レジストリの2001~2010年の院外心停止蘇生実施ケース患者を特定して調べた。
主要評価項目は、バイスタンダーCPR、バイスタンダー除細動、30日生存率、1年生存率についての経時的傾向だった。
バイスタンダーCPR実施と院外心停止後生存がともに増加
調査対象期間中の心停止患者は2万9,111例であった。そのうち、非心原性心停止例(7,390例)と救急医療隊員による蘇生であることが確認された例(2,253例)を除外した1万9,468例を試験集団とした。被験者の年齢中央値は72歳、男性が67.4%であった。
バイスタンダーCPRの実施は試験期間中、2001年の21.1%(95%信頼区間[CI]:18.8~23.4%)から2010年の44.9%(同:42.6~47.1%)に有意に増大していた(p<0.001)。一方、バイスタンダー除細動の実施も倍増していたものの、実施率は低いままであった(1.1%→2.2%、p=0.003)。
病院へ生存した状態で到着できた人の数は、7.9%(95%CI:6.4~9.5%)から21.8%(同:19.8~23.8%)へと有意に増大していた(p<0.001)。また30日生存率も有意に改善していた(3.5%→10.8%、p<0.001)。1年生存率も同様に有意に改善していた(2.9%→10.2%、p<0.001)。
なお、試験期間中に院外心停止患者の発生数自体は有意に減少していた(10万人当たり40.4人→34.4人、p=0.002)。そうした中で生存者数が有意に増大していた(10万人当たり2.9人→6.4人、p<0.001)。
全試験期間中、バイスタンダーCPRは、心停止の発症を目撃されていない場合でも、30日生存率の改善と明らかな関連が示された。同30日生存率は、バイスタンダーCPRあり4.3%、同なし1.0%で、オッズ比は4.38(95%CI:3.17~6.06)だった。目撃されていた場合の同値は、19.4%、6.1%、オッズ比3.74(95%CI:3.26~4.28)だった。
上記結果を踏まえて著者は、「デンマークでは2001~2010年の間に、院外心停止後生存者の増加と、バイスタンダーCPRの増加が有意に関連していた。同時期に起きている他の改善要因もあるので、因果関係についてはなお不明である」とまとめている。