慢性脳脊髄静脈不全、多発性硬化症の有無にかかわらず有病率は2~3%/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2013/10/28

 

 慢性脳脊髄静脈不全(CCSVI)の有病率について、多発性硬化症患者(MS)とその非罹患兄弟姉妹、さらに非血縁の健常者を対象に調べたところ、いずれも2~3%とまれではあるが同程度であり、MS患者における有病率の増大などは認められなかった。カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のAnthony L Traboulsee氏らが行った、ケースコントロール試験の結果、明らかにされたもので、CCSVIはこれまで、多発性硬化症患者においてのみ発症し健常者では発症しないとされていた。なお、50%超の静脈狭窄を呈する患者の割合はいずれも約7割と同程度で、著者は「MS患者において静脈狭窄を呈する割合が高い理由はわからないままである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2013年10月9日号掲載の報告より。

静脈撮影でCCSVI診断基準により評価
 研究グループは、2011年1月~2012年3月にかけて、カナダの3ヵ所の医療センターを通じ、合計177例を対象に試験を開始した。被験者はいずれも成人であり、MS患者が79例、非罹患兄弟姉妹55例、非血縁の健常者(コントロール群)が43例だった。

 内頸静脈・奇静脈の狭窄について、カテーテル静脈撮影と超音波検査を行い、Zamboni氏らにより提唱されたCCSVI診断基準で評価を行った。

大静脈50%超の狭窄は多発性硬化症にかかわらず約7割
 その結果、カテーテル静脈撮影の結果が得られた被験者のうち、CCSVI診断基準で陽性だった人は、MS患者65例中1例(2%)、非罹患兄弟姉妹46例中1例(2%)、コントロール群32例中1例(3%)と、いずれも同程度だった(すべての比較のp=1.0)。

 また、大静脈のいずれかに50%超の狭窄が認められた人の割合も、MS患者65例中48例(74%)、兄弟姉妹47例中31例(66%)、コントロール群37例中26例(70%)と、いずれの群でも高率で認められ、群間の有意な差はみられなかった(p=0.82)。

 一方、超音波検査によりCCSVI診断基準陽性だった人の割合は、MS患者79例中35例(44%)、兄弟姉妹54例中17例(31%)、コントロール群38例中17例(45%)で、群間の有意差はみられなかった(p=0.98)。超音波検査による、カテーテル静脈撮影の静脈50%超の狭窄に関する感度は、0.406(95%信頼区間:0.311~0.508)、特異度は0.643(同:0.480~0.780)と、いずれも低かった。

 著者は、「本研究により、CCSVIはMS患者、健常者ともに発症はまれであることが示された。脳脊髄静脈の50%超狭窄は、いずれの患者においても頻度が高かった。また、超音波検査は感度も特異度も低かった」と述べ、「MSにおいてなぜ静脈狭窄が起きるのかは不明なままである」とまとめている。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)