LDLコレステロール(LDL-C)値推算法について、従来のFriedewald式よりも正確なガイドラインのリスク層別化に優れた新たな方程式が、米国・ジョンズ・ホプキンス大学チッカローネ心疾患予防センターのSeth S. Martin氏らにより開発された。Friedewald式は1972年に448例の患者のデータを分析して編み出された、LDL-C実測の手間とコストがかからない計算式であり、長年、研究や臨床の目標値として、また国際的ガイドライン等の主要目標として取り入れられてきた。新推算法は、従来式の「トリグリセリド(TG)/5」の5という固定係数の解消を図ったもので、135万人の脂質データを分析して新たに補正係数を作成し、それを用いた評価法を開発した。JAMA誌2013年11月20日号掲載の報告より。
全米の小児~成人135万人の脂質データを分析し開発
従来のFriedewald式([総コレステロール値]-[HDL-C]-[TG/5])では、VLDL-Cに対するTG(TG:VLDL-C)比は5と固定されていたが、実際のTG:VLDL-C比はTG値とコレステロール値によって有意に変動する。研究グループは、TG:VLDL-C比に補正係数を用いることで標準脂質プロファイルからLDL-C推定値を導き出す新たな方程式の開発に取り組んだ。
係数開発には、2009年~2011年に、米国人(小児、若者、成人)135万908人の臨床脂質プロファイルの連続検体を用いた。コレステロール値は遠心分離法にて直接測定し、TG値も直接測定した。脂質分布は、全米健康栄養調査(NHANES)と適合させて行った。
検体は、無作為に開発群(90万605例)と検証群(45万303例)の各データセットに割り付けられ、臨床診療ガイドラインのLDLリスク分類の一致について、推定値と実測値を用いた場合を比較した。
TG値400mg/dL未満のリスク分類一致率、85.4%から91.7%に有意に改善
開発群のTG:VLDL-C比中央値は、5.2(IQR:4.5~6.0)だった。TG:VLDL-C比とTG値およびnon-HDL-C値とのバリアンスは65%だった。
TG値とnon-HDL-C値を組み合わせて、新たに180通りのTG:VLDL-C比中央値を評価するセルテーブルを作成した。それを、検証群に適用し新たなLDL-C推算法を開発した。
その結果、TG値400mg/dL未満の患者において、LDL-C直接測定法によるガイドラインリスク分類との一致率が、従来のFriedewald式では85.4%(95%信頼区間[CI]:85.3~85.5%)であったが、新推算式では91.7%(同:91.6~91.8%)と有意に改善した(p<0.001)。
改善が最も大きかったのは、LDL-C値70mg/dL未満への分類で、とくにTG値が高値の患者において改善が大きかった。
すなわち、推定LDL-C値70mg/dL未満群において、実際にLDL-C値70mg/dL未満であったのは、TG値100~140mg/dL群では従来式79.9%(95%CI:79.3~80.4%)、新推算式94.3%(同:93.9~94.7%)、TG値150~199mg/dL群では、61.3%(同:60.3~62.3%)と92.4%(同:91.7~93.1%)、TG値200~399mg/dL群では、40.3%(同:39.4~41.3%)と84.0%(同:82.9~85.1%)だった。
上記の結果から著者は、「TG:VLDL-C比の補正係数を用いた新たなLDL-C推算法は、Friedewald式よりもより正確なガイドラインリスク分類を提供した」と結論している。そのうえで「外的妥当性の検証と臨床的意義についての評価が必要ではあるが、この新たな推算法の臨床導入は簡便でコストがかからないものだろう」と述べている。