ST上昇型心筋梗塞患者への新たな治療戦略の模索:MULTISTRATEGY

提供元:ケアネット

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公開日:2008/04/29

 



経皮的冠動脈形成術(PCI)を受けるST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者への、アブシキシマブ療法とベアメタルステント留置の治療戦略は心イベントを減らすが、同様のベネフィットが、高用量ボーラスのチロフィバン療法で、またシロリムス溶出ステントを用いた場合で確認できるかどうか。MULTISTRATEGY(Multicentre Evaluation of Single High-Dose Bolus Tirofiban vs Abciximab With Sirolimus-Eluting Stent or Bare Metal Stent in Acute Myocardial Infarction Study)研究グループによる報告が、JAMAオンライン版2008年3月30日号、本誌4月16日号にて発表された。

アブシキシマブ vs チロフィバン、ベアメタル vs シロリムス溶出ステント




チロフィバンがアブシキシマブと同様の効果があるのかは確認されておらず、シロリムス溶出ステントはベアメタルステントに比べて、標的血管再建術のリスクを減らすとする一方で相反する結果が無作為化試験により報告されているためSTMI患者への留置は認められていない。

研究グループは、これら効果を比較検討する非盲検2×2要因試験を行った。試験期間は2004年10月~2007年4月。イタリア、スペイン、アルゼンチンの16施設で、STEMIあるいは新規の左脚ブロックを呈した患者計745例が対象。患者は無作為に、チロフィバン群またはアブシキシマブ群に割り付けられ、さらにこれら患者をベアメタルステント群とシロリムス溶出ステント群に割り付けられた。

主要評価項目は、薬剤比較は投与90分以内のST上昇改善の達成割合(9%絶対差、相対リスク0.89に相当する50%改善に達した割合を比較)、ステント比較は8ヵ月以内の主な心イベント発生率(全死亡、再梗塞、標的血管再建術に至った臨床イベント)。

チロフィバンは同等、シロリムス溶出ステントは有意にリスク低下




ST上昇改善は、アブシキシマブ群では83.6%(302/361例)で、チロフィバン群では85.3%(308/361例)で出現。相対リスクは1.020(95%信頼区間:0.958~1.086、非劣性に対するP<0.001)で、両剤の虚血性および出血性のアウトカムはほぼ同程度であることが認められた。

また8ヵ月時点の主な心イベント発生率は、ベアメタルステント群で14.5%、シロリムス溶出ステント群では7.8%で(P=0.004)、主として標的血管再建術の低下がシロリムス溶出ステント群で際立っていた(10.2% vs 3.2%)。ステント血栓症の発生率は両群でほぼ同程度である。

研究グループは「チロフィバンの効果はアブシキシマブに劣らず、シロリムス溶出ステントはベアメタルステントよりも有意に心イベントリスクを低下していた」と結論づけている。

(朝田哲明:医療ライター)