腎動脈ステントは薬物療法を超えるか?/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2013/12/09

 

 アテローム硬化性腎動脈狭窄で、高血圧あるいは慢性腎臓病を有する患者への腎動脈ステントは、薬物療法単独と比べて臨床イベントの予防に関して有意なベネフィットをもたらさないことが明らかになった。米国・トレド大学のChristopher J. Cooper氏らによる多施設共同オープンラベル無作為化対照試験「CORAL」の結果、報告された。高齢者に一般的にみられるアテローム硬化性腎動脈狭窄について、先行研究2件において、腎動脈ステントは腎機能改善にベネフィットがないことが示されていた。しかし、重大有害腎・心血管イベント予防に関しては不明であったことから本検討が行われた。NEJM誌オンライン版2013年11月18日号掲載の報告より。

947例を薬物療法+ステント群と薬物療法単独群に無作為化して追跡
 CORAL試験は、2005年5月16日~2010年1月30日の間に、5,322例がスクリーニングを受け、適格であった947例を無作為化して行われた。対象は、重症腎動脈狭窄で(血管造影で80%以上狭窄あるいは60~80%未満狭窄で圧格差20mmHg以上と定義)、高血圧(2剤以上の降圧薬服用だが収縮期血圧[SBP]155mmHg以上と定義)あるいは慢性腎臓病(eGFR 60mL/分/1.73m2未満と定義)を有する患者であった。

 被験者は、薬物療法+腎動脈ステントを受ける群(467例)と薬物療法のみを受ける群(480例)に割り付けられ、重大心血管・腎イベント(心血管あるいは腎イベントが原因の死亡、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全による入院、進行性腎障害、腎代替療法の必要性の複合エンドポイント発生)について2012年9月28日まで追跡を受けた。

 評価は、試験開始後に同意を得ていた1施設16例を除外した931例(ステント群459例、薬物療法単独群472例)をintention-to-treat解析して行われた

主要複合エンドポイント、全死因死亡の発生に有意差みられない
 追跡期間中央値は、43ヵ月(範囲:31~55ヵ月)だった。

 ステント群は、狭窄が68±11%から16±8%に有意に改善した(p<0.001)。透析導入は、両群共に無作為化後30日以内ではいなかったが、ステント群で30~90日に1例で開始となった。また薬物療法単独群で、無作為化当日に致死的脳卒中が1例発生した。

 主要複合エンドポイントの発生は、両群間で有意差はみられなかった(ステント群35.1%vs. 薬物療法単独群35.8%、ハザード比[HR]:0.94、95%信頼区間[CI]:0.76~1.17、p=0.58)。

 また、主要エンドポイントの各項目についても有意差はなかった。全死因死亡についても有意差はなかった(同:13.7%vs. 16.1%、0.80、0.58~1.12、p=0.20)。

 ベースライン時の被験者の降圧薬服用数は、2.1±1.6剤だった。試験終了時の同服用数は、ステント群3.3±1.5剤、薬物療法単独群3.5±1.4剤で両群間に有意差はなかった(p=0.24)。

 SBPの降圧は、ステント群16.6±21.2mmHg、薬物療法単独群15.6±25.8mmHgで、縦断的解析の結果、わずかだがステント群のほうが降圧効果は大きかった(-2.3mmHg、95%CI:-4.4~-0.2mmHg、p=0.03)。両群の差は追跡期間中、一貫してみられた。

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コメンテーター : 冨山 博史( とみやま ひろふみ ) 氏

東京医科大学 循環器内科 教授

J-CLEAR評議員