近位部深部静脈血栓症(DVT)後の弾性加圧ストッキング(ECS)装着について、血栓後症候群(PTS)の予防効果はないことが判明した。カナダ・ジューイッシュ総合病院のSusan R Kahn氏らが、800例超対象の多施設共同無作為化プラセボ対照試験の結果、報告した。ECSによるPTS予防効果は、これまで非プラセボ単施設試験で示唆されていた。Lancet誌オンライン版2013年12月6日号で発表した。
弾性ストッキングをDVT後2週間以内から2年間、日中装着
研究グループは、ECSによるPTS予防効果をプラセボ対照にて評価するため、2004~2010年に近位部DVTを初めて発症した806例について、多施設共同無作為化プラセボ対照比較試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方はECS(410例)を、もう一方にはプラセボECS(396例)を使用した。
ECSの使用はDVT後2週間以内から開始した。起床後から就寝時まで装着するよう指示し、6ヵ月ごとに交換しながら2年間にわたって行われた。被験者の平均年齢は55.1歳だった。
PTS累積発生率はECS群とプラセボ群で同等
主要アウトカムは、6ヵ月後以降のGinsberg's criteria(1ヵ月以上の下肢の痛みとむくみ)で認められたPTSの発生率だった。
結果、PTS累積発生率はECS群が14.2%に対し、プラセボECS群が12.7%と、両群で有意差はなかった(補正後ハザード比:1.13、95%信頼区間:0.73~1.76、p=0.58)。
また、ECSの使用頻度が高かった人のみについて行ったパー・プロトコル解析の結果も、PTS累積発症率について両群で有意差はなかった(同:0.96、0.53~1.74)。
結果を踏まえて著者は、「われわれの所見は、DVT後のECSを日常的に装着することを支持しないものであった」と結論している。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)