B型の2株(ビクトリア系、山形系)を含めた不活化インフルエンザ4価ワクチン(quadrivalent influenza vaccine:QIV)の有効性に関する、3~8歳児5,000例超を対象とした第3相無作為化対照試験の結果が発表された。ワクチン有効率は全体で59.3%、中等症~重症例では74.2%であったことなどが示された。試験を実施・報告したレバノン・アメリカン大学ベイルート病院のVarsha K. Jain氏らは、「QIVはインフルエンザA型とB型を予防する際に有効であることが示された」と結論している。インフルエンザワクチンはWHOではA型2株とB型1株の3価製剤を推奨し、日本でも採用されている。しかし、B型について2株が混合流行する傾向が続いており、4価製剤が開発された。米国では今シーズンから4価が導入されているという(http://www.nih.go.jp/niid/ja/iasr-sp/2257-related-articles/related-articles-405/4099-dj4053.html)。NEJM誌オンライン版2013年12月11日号掲載の報告より。
3~8歳児5,168例を対象に無作為化試験
小児(3~8歳)のインフルエンザA型またはB型の予防に関するQIVの有効性を検討した無作為化試験は、多国間の15施設(バングラディシュ、ドミニカ共和国、ホンジュラス、レバノン、パナマ、フィリピン、タイ、トルコ)で行われた。各国で登録された被験児は、QIVを接種する群とコントロールとしてA型肝炎ワクチンを接種する群(以下、対照群)に無作為に割り付けられた。
主要エンドポイントは、リアルタイムPCR(rt-PCR)法で確認されたインフルエンザA型またはB型で、副次エンドポイントは、rt-PCR確認の中等症~重症のインフルエンザと、rt-PCR陽性のインフルエンザウイルス培養株であった。
ワクチンの有効性と日常生活または医療サービス利用への影響に関する評価を、全ワクチン接種コホート群(計5,168例、各群2,584例)、パー・プロトコルコホート群(QIV群2,379例、対照群2,398例)について行った(平均年齢5.4歳、男女ほぼ同数)。
全接種コホートでのQIV有効率59.3%、中等症~重症例では74.2%
被験児登録は2010年12月に開始され、インフルエンザ様疾患(37.8℃以上の発熱、咳・咽頭痛・鼻水・鼻閉のうち1つ以上の症状と定義)の発症に関するサーベイランスが6ヵ月以上、2011年10月まで行われた。疾患発症児は発症から14日間日記による記録が行われた。
結果、全ワクチン接種コホートにおけるインフルエンザ様疾患発生は、QIV群563例(422児)、対照群657例(507児)であった。rt-PCR確認インフルエンザの発生は、QIV群62例(2.40%)、対照群148例(5.73%)で、QIV有効率は59.3%(95%信頼区間[CI]:45.2~69.7)であることが示された。培養確認インフルエンザに対する効果は59.1%(97.5%CI:41.2~71.5)であった。
同コホートで中等症~重症であったrt-PCR確認インフルエンザ例についてみると、罹患率はQIV群16例(0.62%)、対照群61例(2.36%)で、QIV有効率は74.2%(97.5%CI:51.5~86.2)であった。
パー・プロトコル群では、QIV有効率は55.4%(95%CI:39.1~67.3)、培養確認インフルエンザに対する効果は55.9%(97.5%CI:35.4~69.9)であった。また、同コホートでの中等症~重症例の有効率は、73.1%(97.5%CI:47.1~86.3)だった。
QIVは対照と比較して、39℃超の発熱および下気道疾患のリスク抑制と関連していた。パー・プロトコル群における相対リスクはそれぞれ、0.29(95%CI:0.16~0.56)、0.20(同:0.04~0.92)だった。
QIVは、4株すべてについて免疫獲得を達成した(接種後6ヵ月時80~90%超)。
重篤な有害イベントの発生は、QIV群36例(1.4%)、対照群24例(0.9%)だった。
(武藤まき:医療ライター)