悪性中大脳動脈領域梗塞を起こした61歳以上の高齢患者に対する減圧開頭術は、重度の障害を伴わない生存者を増大することが、ドイツ・ハイデルベルク大学のEric Juttler氏ら「DESTINY II」共同研究グループによる検討の結果、示された。大部分の生存者は介助を必要としたが、その大半は身体的ニーズだった。先行研究により、中大脳動脈領域全体、またはほぼ全体に梗塞を起こした60歳以下の患者において、早期の減圧開頭術は死亡率を低下し重度障害リスクも増大しないことが示されていた。しかし高齢患者において同様のベネフィットがあるのかは不明であった。NEJM誌2014年3月20日号掲載の報告より。
61歳以上の悪性中大脳動脈梗塞患者112例を対象に前向き非盲検無作為化試験
DESTINY II(Decompressive Surgery for the Treatment of Malignant Infarction of the Middle Cerebral Artery II)は、2009年8月~2013年5月にドイツ国内13ヵ所で行われた多施設共同前向き非盲検無作為化対照試験だった。
悪性中大脳動脈梗塞を起こした61歳以上(中央値70歳、範囲:61~82歳)の患者112例をICUで保存的治療を行う群(対照群)または減圧開頭術のいずれかを受ける群に無作為に割り付けた(発症後48時間以内)。
主要エンドポイントは、無作為化後6ヵ月時点の重度障害のない生存だった。評価は、修正Rankin尺度(0:障害なし~6:死亡)で0~4を重度障害なしと定義して行った。
減圧開頭術群の重度障害なしの生存者、対照群の約3倍
結果、減圧開頭術の施行は主要アウトカムを改善したことが認められた。重度障害を伴わず生存していた患者は、減圧開頭術群は38%、対照群18%で有意な差が認められた(オッズ比:2.91、95%信頼区間[CI]:1.06~7.49、p=0.04)。この差は、手術群で死亡率が低かったことによるものであった(33%vs. 70%)。
修正Rankin尺度スコアが0~2(障害なしまたは軽度の障害)の生存患者はいなかった。スコア3(中等度の障害)の患者は手術群7%、対照群3%でみられた。また、スコア4(やや重度の障害[大半は身体的ニーズの援助を要する])の患者はそれぞれ32%、15%、スコア5(重度の障害)の患者は28%、13%だった。
減圧開頭術群では感染症の頻度がより多く、対照群ではヘルニアの頻度がより多くみられた。
(武藤まき:医療ライター)