大腿骨頚部骨折手術時の局所麻酔は全身麻酔と比較して、30日死亡を低下せず、入院期間の短縮はわずかであることが、米国・ペンシルベニア大学のMark D. Neuman氏らによる後ろ向き適合コホート研究の結果、示された。最近の診療ガイドラインでは、局所麻酔の使用が提唱されている。著者は「今回の分析では、局所麻酔について死亡に対する有益性があることは裏付けられなかった」と結論している。JAMA誌2014年6月25日号掲載の報告より。
30日死亡率と入院期間について評価
研究グループは、大腿骨頚部骨折後の30日死亡率と入院期間を、手術時の局所麻酔(脊髄くも膜下または硬膜外麻酔など)vs. 全身麻酔で評価した。2004年7月1日~2011年12月31日に、ニューヨークの急性期治療を担う総合病院で同手術を受けた50歳以上の患者を対象とした。
主要分析は、遠近(near-far)操作変数マッチング法を用いて、局所麻酔が盛んに行われていると特定された病院近くに居住する患者と、同じく局所麻酔が回避され全身麻酔が行われていると特定された病院近くに居住する患者について評価した。
副次分析は、同一病院内および全病院の中で局所麻酔または全身麻酔を受けた患者をマッチさせて検討した。
局所麻酔群、30日死亡率の有意な低下みられず、入院期間は有意だが0.6日の短縮
被験者は5万6,729例であり、1万5,904例(28%)が局所麻酔を、4万825例(72%)が全身麻酔を受けていた。全体で死亡は3,032例(5.3%)、入院期間のM推定値(M estimate)は6.2日(95%信頼区間[CI]:6.2~6.2)であった。
主要分析(対象患者計2万1,514例)では、麻酔法の違いによる30日死亡率の有意差はみられなかった。局所麻酔病院群に分類された患者1万757例における死亡は583例(5.4%)、全身麻酔病院群に分類された患者1万757例における死亡は629例(5.8%)で、操作変数推定リスク差は-1.1%(95%信頼区間[CI]:-2.8~0.5、p=0.20)だった。
30日死亡率について、副次分析でも同様の所見がみられた(病院内分析:5.2%vs. 5.3%、全病院分析:5.3%vs. 5.8%)。
入院期間は、主要分析では全身麻酔病院群よりも局所麻酔病院群で、0.6日(95%CI:-0.8~-0.4、p<0.001)の短縮がみられた。副次分析でも局所麻酔群の入院期間短縮がみられたが、その関連性は主要分析よりもわずかであった。
(武藤まき:医療ライター)