大腿骨近位部骨折手術、局所麻酔は短期的死亡リスクを下げるか/BMJ

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2014/07/14

 

 大腿骨近位部骨折に対する修復手術の短期的な死亡リスクは、麻酔法の違いで差はないことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のElisabetta Patorno氏らの検討で確認された。大腿骨近位部骨折は毎年、世界で150万例以上が罹患し、65歳以上の人口の増加に伴い、2050年までに年間600万例を上回ると予測されている。本症は合併症や死亡のリスクが高く、院内死亡の多くが肺や心血管系の合併症に起因する。治療は一般に外科的修復術が行われるが、局所麻酔は気道確保が不要で失血量が少なく、また深部静脈血栓のリスクが低く、術後の鎮痛処置の効果も良好なため、全身麻酔に比べ術後の死亡リスクが低いとの仮説が提唱されているが、これまでに得られた知見は相反するものだという。BMJ誌オンライン版2014年6月27日号掲載の報告。

麻酔のタイプ別の院内死亡リスクを後ろ向きに評価
 研究グループは、米国における大腿骨近位部骨折に対する修復手術時の麻酔をタイプ別に分け、院内死亡リスクをレトロスペクティブに比較するコホート試験を実施した。

 対象は、年齢18歳以上、大腿骨近位部骨折で入院2日目以降に外科的修復術を受けた患者とした。データの収集にはPremier research databaseを用いた。Premierは米国の約500施設が参加する全国組織で、データベースには同国の全入院患者の約6分の1の診療記録が含まれる。

 2007年10月1日~2011年9月30日までに、7万3,284例が大腿骨近位部骨折で手術を受け2日以上入院した。このうち全身麻酔が6万1,554例(84.0%)に、局所麻酔が6,939例(9.5%)に、両麻酔法の併用が4,791例(6.5%)に行われた。

麻酔法の選択は短期的死亡率以外の指標で決めるべき
 年齢中央値は全身麻酔群が82歳、局所麻酔群が83歳、併用麻酔群は83歳であり、女性はそれぞれ70.7%、73.0%、71.6%であった。

 院内全死因死亡率は、全身麻酔群が2.2%(1,362例)、局所麻酔群が2.1%(144例)、併用麻酔群は2.4%(115例)であった。

 多変量解析では、全身麻酔群に対する局所麻酔群の死亡リスクに有意な差はなく(補正リスク比:0.93、95%信頼区間[CI]:0.78~1.11)、併用麻酔群にも有意差は認めなかった(同:1.00、0.82~1.22)。

 混合効果モデルによる解析でも、全身麻酔と局所麻酔(補正リスク比:0.91、95%CI:0.75~1.10)、全身麻酔と併用麻酔群(同:0.98、0.79~1.21)の間に有意な差はみられなかった。

 入院当日に手術を受けた患者を含めた解析でも同様の結果であり、退院時にがんの診断がない患者や75歳以上の患者においても、結果は同じであった。

 著者は、「この大規模な全国調査では麻酔法の違いによる死亡リスクの差は確認されなかった。以前に指摘された短期的な死亡リスクに関する局所麻酔のベネフィットは、あるとしてもごくわずかなものであろう」とまとめ、「麻酔法の選択は短期的死亡率以外の指標に基づいて行うべきである」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)