肛門管癌患者にとって化学・放射線併用療法は根治療法の第一選択だが、フルオロウラシル/マイトマイシンとの併用療法では5年無病生存率は約65%にとどまる。そのためテキサス大学消化器腫瘍部門のJaffer A. Ajani氏らは、標準治療とされるマイトマイシン併用療法と比較するため、シスプラチン併用療法を試験的に実施、有効性について検証した。JAMA誌2008年4月23日号より。
肛門管癌患者682例を2つの介入群に無作為割り付け
US Gastrointestinal Intergroup trial RTOG 98-11は、フルオロウラシル/マイトマイシン/放射線療法の併用と、フルオロウラシル/シスプラチン/放射線療法の併用とを、第III相多施設共同無作為化試験によって比較検証した。治験参加者は1998年10月31日~2005年6月27日の間に登録された肛門管癌患者682例。
参加者は、2つの介入群の内のどれかに無作為に割り付けられた。(1)マイトマイシンをベースとしたグループ(n = 341):フルオロウラシル(1-4日目、29-32日目に1000mg/m2)とマイトマイシン(1日目と29日目に10mg/m2)と放射線療法(45-59Gy)、(2)シスプラチンをベースとしたグループ(n = 341):フルオロウラシル(1-4、29-32、57-60、85-88日目に1000mg/m2)とシスプラチン(1、29、57、85日目に75mg/m2)と放射線療法(45-59Gy、57日目に開始)の2群。
主要エンドポイントは5年無病生存率、副次的エンドポイントは全生存率と再発までの期間とした。
ほとんどの指標でマイトマイシン投与群が好結果
計644例で評価が可能だった。全症例の追跡期間中央値は2.51年。年齢中央値は55歳、69%が女性で、27%は腫瘍径が5cm以上、26%は臨床的にリンパ節転移陽性だった。
5年無病生存率は、マイトマイシン群が60%(95%信頼区間[CI] 53%-67%)、シスプラチン群が54%(95%CI 46%-60%)であった(P = 0.17)。
5年の全生存率は、マイトマイシン群が75%(95%CI 67%-81%)とシスプラチン群が70%(95%CI 63%-76%)であった(P =0 .10)。
シスプラチン群の5年後の肛門周囲での再発と遠隔転移率はそれぞれ25%(95%CI 20%-30%)と15%(95%CI 10%-20%)、マイトマイシン群はそれぞれ33%(95%CI 27%-40%)と19%(95%CI 14%-24%)であった。
人工肛門造設術の頻度はマイトマイシン群の方がシスプラチン群より有意に低かった(10%対19%、P =0.02)。重度の血液学的毒性はマイトマイシン群でより重症だった(P<0.001)。
肛門管癌患者割合におけるシスプラチン・ベースの併用療法はマイトマイシン・ベースの療法と比較して無病生存率の改善に至らなかったばかりか、人工肛門形成術の頻度で有意に悪い結果を招いた。
これらの所見から研究グループは、肛門管癌治療におけるフルオロウラシル/放射線併用療法において、マイトマイシン代替のシスプラチン並行投与は支持できないと結論づけた。