米国では毎年約166,200例の突然の心停止が病院外で起きている。そのうち約4分の3は自宅で、それゆえ各家庭で適時治療を行えるかどうかは救急医療の課題になっている。Gust H. Bardy氏らHAT(Home Automated External Defibrillator Trial)研究グループは、公共施設等でのAED設置が突然の心停止の生存率改善に寄与していることから、リスクの高い患者の生存率改善のため在宅AED使用の有用性を検討した。NEJMオンライン版2008年4月1日号、本誌2008年4月24日号より。
自宅療養者7,001例をAED使用と不使用に割り付け生存率を調査
突然の心停止リスクが中等度である患者が、自宅でAEDを使えることで生存率が改善するかどうかを調べるため、前壁心筋梗塞既往患者のうち植込み型除細動器の非適応患者7,001例を対象とする無作為化試験が行われた。対象は、自宅で突然の心停止が起きた場合、救急電話をして心肺蘇生術(CPR)を実行する群と、AEDを使用して救急電話、そしてCPRを実行する群に無作為に割り付けられた。
対象患者の年齢中央値は62歳。女性患者の割合は17%。追跡期間(中央値)は37.3ヵ月。主要転帰は全死因死亡とされた。
蘇生法に重点を置いた従来法と比べて、有意に改善することはなかった
対象患者の全死亡は450例。AED非使用群が228/3,506例(6.5%)、AED群は222/3,495例(6.4%)で、ハザード比は0.97(95%CI:0.81~1.17、P=0.77)。事前規定の主要サブグループ別にみた死亡率に有意差はみられなかった。
頻脈性不整脈での突然の心停止と考えられた死亡例は160例(35.6%)で、このうち家庭で心停止が起きたのは117例で、そのうち58例が発作を目撃された。そして32例にAEDが使用された。この32例中、適切に電気ショックが受けられたのは14例であり、その後4例が生存退院した。不適切な電気ショックに関する報告はなかった。
この結果を受け、「家庭でAEDを使用しても、従来の蘇生法に重点を置いた方法と比べて、生存率が有意に改善することはなかった」と結論している。
(武藤まき:医療ライター)