切除不能大腸がんの1次治療において、フルオロウラシル(5-FU)/ロイコボリン(LV)+オキサリプラチン+イリノテカン(FOLFOXIRI)とベバシズマブ(BV)の併用療法は、標準治療である5-FU/LV+イリノテカン(FOLFIRI)とBVの併用療法よりも良好な予後をもたらすことが、イタリア・ピサ大学のFotios Loupakis氏らが行ったTRIBE試験で示された。切除不能大腸がんの1次治療では、従来、FOLFIRIまたは5-FU/LV+オキサリプラチン(FOLFOX)と血管内皮細胞増殖因子(VEGF)のモノクローナル抗体であるBVの併用療法が標準治療とされる。しかしBVの臨床導入以前にFOLFOXIRIのほうがFOLFIRIやFOLFOXよりも有効性が優れることが示されており、またFOLFOXIRI+BVの第II相試験において、有望な抗腫瘍効果と良好な安全性が確認されていた。NEJM誌2014年10月23日号掲載の報告より。
FOLFOXIRI+BVの予後改善効果を無作為化試験で評価
TRIBE試験は、切除不能大腸がんの1次治療におけるFOLFOXIRI+BV療法とFOLFIRI+BV療法の有用性を評価する非盲検無作為化第III相試験。対象は、年齢18~75歳、全身状態(ECOG PS)が0~2(70歳以上は0)で、組織学的に腺がんが確証され、治癒切除が不能と判定された患者であった。
被験者は、FOLFOXIRI+BV群またはFOLFIRI+BV群(対照群)に無作為に割り付けられ、1サイクル2週の治療が最大12サイクル施行されたのち、維持療法として5-FU+BV療法が病態進行となるまで継続された。
主要評価項目は無増悪生存期間(PFS、割り付け時から病態進行または死亡までの期間)であり、評価は中央判定で行われた。
FOLFOXIRI+BVのPFSが有意に2.4ヵ月延長、OSに有意差なし
2008年7月~2011年5月までにイタリアの34施設から508例が登録され、FOLFOXIRI+BV群に252例(年齢中央値60.5歳、男性59.5%、PS 0は90.1%)が、FOLFIRI+BV群には256例(60.0歳、60.9%、89.5%)が割り付けられた。原発巣が右結腸の患者がそれぞれ34.9%、23.8%(p=0.02)と有意な差がみられたが、これ以外の背景因子に差はなかった。
PFS中央値は、FOLFOXIRI+BV群が12.1ヵ月と、FOLFIRI+BV群の9.7ヵ月に比べ有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.62~0.90、p=0.003)。術後補助療法歴のある患者を除く全サブグループにおいて、PFSに関するFOLFOXIRI+BV群のベネフィットが認められた。
客観的奏効率(ORR)は、FOLFOXIRI+BV群が65.1%(完全奏効:4.8%、部分奏効:60.3%)、FOLFIRI+BV群は53.1%(3.1%、50.0%)であり、有意差が認められた(HR:1.64、95%CI:1.15~2.35、p=0.006)。また、全生存期間(OS)中央値はFOLFOXIRI+BV群が31.0ヵ月と、FOLFIRI+BV群の25.8ヵ月よりも延長する傾向がみられたが、有意な差はなかった(HR:0.79、95%CI:0.63~1.00、p=0.054)。
FOLFOXIRI+BV群はFOLFIRI+BV群に比べ、Grade 3~4の末梢神経障害(5.2 vs. 0%、p<0.001)、口内炎(8.8 vs. 4.3%、p=0.048)、下痢(18.8 vs. 10.6%、p=0.01)、好中球減少症(50.0 vs. 20.5%、p<0.001)の頻度が有意に高かった。BV関連の有害事象の頻度は両群で同等であった。重篤な有害事象(20.4 vs. 19.7%、p=0.91)および有害事象による死亡(2.4 vs. 1.6%)にも両群間に差はなかった。
著者は、「FOLFOXIRI+BV療法による6ヵ月の導入療法と5-FU+BVによる維持療法は標準治療よりも高い効果を示した。医療費は有害事象の発症に応じて増加した」とまとめ、「1次治療で3剤併用化学療法を行った場合の2次治療以降のレジメンや、RAS野生型例への適応などの課題が残る」としている。
(医学ライター 菅野 守)