米国で浸潤性乳がんと診断された女性のうち、早期乳がんの診断率やStage I診断後の生存率は、人種や民族の違いによって多彩であり、これは腫瘍の生物学的悪性度の違いで説明できる可能性があることが、カナダ・Women’s College HospitalのJavaid Iqbal氏らの検討で示された。乳がん管理プログラムの目標は、Stage I乳がんの割合を相対的に多くすることで、がん死亡率を減少させることとされる。そのためには、Stage I診断の関連因子やStage Iの検出率がよくない集団を同定することが重要である。JAMA誌2015年1月13日号掲載の報告。
8つの人種/民族別の悪性度を観察研究で評価
研究グループは、米国における人種/民族別のStage I乳がんの同定率を調査し、腫瘍の早期検出や、悪性度の生物学的な違いで民族間の差を説明できるかの検証を目的に、観察研究を行った(Canadian Institute of Health ResearchおよびCanada Researchの助成による)。
Surveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)の18のレジストリー・データベースを用いて、2004~2011年に浸潤性乳がんと新規に診断された女性45万2,215例を同定した。8人種/民族(非ヒスパニック系白人、ヒスパニック系白人、黒人、中国系、日系、南アジア系、その他のアジア系、他の民族系)別に、2.0cm以下の小サイズの腫瘍の生物学的悪性度(トリプルネガティブ乳がん、リンパ節転移、遠隔転移)の評価を行った。
8人種/民族別に、診断時のStage Iとより進行したStageのオッズ比(OR)およびStage I乳がんによる死亡のハザード比(HR)を算出した。最終フォローアップ日は2011年12月31日であった。
主要評価項目は、診断時のStageと、診断時年齢、収入、エストロゲン受容体(ER)の状態で補正した乳がん特異的7年生存率であった。
黒人女性はStage I診断率が低く、死亡率が高い
Stage不明例やER不明例を除く37万3,563例が解析の対象となった。非ヒスパニック系白人が71.9%(26万8,675例)、黒人が10.4%(3万8,751例)、ヒスパニック系白人が9.4%(3万4,928例)、アジア系が6.7%(2万5,211例)、その他が1.6%(5,998例)であった。平均フォローアップ期間は40.6ヵ月、診断時平均年齢は60.5歳であった。
Stage I乳がん率は、非ヒスパニック系白人の50.8%に対し、日系人は56.1%と有意に高く(OR:1.23、95%信頼区間[CI]:1.15~1.31、p<0.001)、黒人は37.0%と有意に低かった(OR:0.65、95%CI:0.64~0.67、p<0.001)。
Stage I乳がんによる7年死亡率は、非ヒスパニック系白人の3.0%に比べ、黒人は6.2%と有意に高く(HR:1.57、95%CI:1.40~1.75、p<0.001)、南アジア系は1.7%と低い値を示したものの有意差はなかった(HR:0.48、95%CI:0.20~1.15、p=0.10)。
小サイズ乳がんによる死亡率は、非ヒスパニック系白人の4.6%に比し、黒人は9.0%と有意に高く(HR:1.96、95%CI:1.82~2.12、p<0.001)、収入およびERの状態で補正後も有意差は保持されていた(HR:1.56、95%CI:1.45~1.69、p<0.001)。
著者は、「このような早期乳がん診断率やStage I乳がんによる死亡率の人種/民族間のばらつきは、リンパ節転移や遠隔転移、トリプルネガティブ乳がんなどの生物学的な悪性度の差で統計学的に説明可能と考えられる」と結論している。
(菅野守:医学ライター)