疾病負担大きい疾病の研究が必ずしも活発ではない/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2015/02/20

 

 英国・オックスフォード大学のConnor A Emdin氏らは、世界疾病負担(global burden of disease)と無作為化試験との関連について分析した。その結果、同負担と試験数との関連は弱いことなどを報告した。以前の検討では、特定の疾病の同負担と試験のアウトプットおよび低所得地域との間で中程度の関連があることが示唆されていた。しかし、低所得地域の人々が影響を受ける疾病に向けられる研究投資は多くはない。そこで研究グループは、無作為化試験の発表件数と世界疾病負担とに関連性がみられるかどうか、また、負担に比して研究調査が少ない特定の疾病があるかどうか、さらに無作為化試験のアウトプットと世界疾病負担の関連について、高所得地域および低所得地域別に説明可能であるかについて分析を行った。BMJ誌オンライン版2015年1月28日号掲載の報告より。

239傷病の無作為化試験数、被験者数と疾病負担との関連を調査
 検討は断面調査手法にて、PubMedに2012年12月に発表され2013年11月17日までにインデックスが付されていた、すべての無作為化試験の主要報告を対象に行った。

 主要評価項目は、239傷病それぞれに関する無作為化試験数、無作為化された被験者数とした。

 レビューで特定した無作為化試験の各アウトカムを、総障害調整生命年(DALY)カテゴリーで分類して(世界疾病負担分類法)、各疾病の全体的な負担を評価した。また多変量回帰分析法を用いて高所得地域vs. 低所得地域のDALY比を算出して高所得地域住民に配慮した疾病の試験のほうが多いかどうかを評価した。

高所得地域vs. 低所得地域の試験数格差は7倍弱だが、疾病ごとのばらつきは26%
 レビューによりアブストラクト4,190件、プライマリな無作為化試験1,351件が特定された。そのうち1,097件を、世界疾病負担分類法で層別化し検討した。

 単回帰および多変量回帰モデルを用いたいずれの分析でも、各疾病の総DALYは無作為化試験数および被験者数の有意な予測因子であることは示唆されたが(p<0.001)、その関連性は単回帰分析において弱いことが示された(各Spearman'sのr=0.35、r=0.33)。

 負担が低所得地域に多い疾病の試験数(/100万DALY)は、高所得地域に多い疾病の試験数に比べて約7分の1だった。しかし疾病ごとにみた試験数のばらつき(総DALYと高所得地域vs. 低所得地域のDALY比でみた)は26%であった。

 また、高所得地域で多い頚部痛、糸球体腎炎などの疾病の無作為化試験数は、低所得地域で多い疾病(ビタミンA欠乏症など)と比べて少なかった。

 以上を踏まえて著者は、「全体として、世界疾病負担と無作為化試験数の関連は弱いものであった。研究に対する世界的な観察により、無作為化試験のアウトプットと世界疾病負担との不一致について監視をし、これを減らすことが必要である」とまとめている。

(武藤まき:医療ライター)

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コメンテーター : 折笠 秀樹( おりがさ ひでき ) 氏

統計数理研究所 大学統計教員育成センター 特任教授

滋賀大学 データサイエンス・AIイノベーション研究推進センター 特任教授

J-CLEAR評議員