化学療法中の乳がん患者にゴセレリン(商品名:ゾラデックス)を併用することで、卵巣機能不全を予防し、早期閉経リスクの低下や、妊娠の可能性が向上することが報告された。米国・クリーブランドクリニックのHalle C.F. Moore氏らPOEMS/S0230研究グループによる無作為化試験の結果、示された。卵巣機能不全は、化学療法の頻度の高い毒性作用である。これまでに行われた卵巣機能の保護を目的としたゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)を用いた試験では、混在した結果が示され、妊娠アウトカムについてのデータは不足していた。NEJM誌2015年3月5日号掲載の報告より。
化学療法単独vs. ゴセレリン併用の無作為化試験で評価
研究グループは2004年2月~2011年5月に、18~49歳、手術可能なホルモン受容体陰性乳がんの閉経前女性患者計257例を、標準化学療法+GnRHアゴニストのゴセレリンを投与する群(ゴセレリン群)と、標準化学療法のみを行う群(化学療法単独群)に無作為に割り付けた。
試験の主要エンドポイントは、2年時点の卵巣機能不全で、評価前6ヵ月間に月経がないことと、卵胞刺激ホルモン(FSH)値が閉経後の範囲値にあることで定義し、発生率を条件付きロジスティック回帰法にて比較した。副次エンドポイントは、妊娠アウトカム、無病生存率、全生存率などであった。
ゴセレリン併用群、2年時点の卵巣機能不全発生オッズ比は0.30
ベースラインで218例(ゴセレリン群105例、化学療法単独群113例)が適格であると判断され、評価可能であった。エンドポイント分析時に生存していた患者の追跡期間中央値は4.1年であった。患者特性は両群でバランスが取れており、年齢中央値は38歳、91%がアントラサイクリン系薬ベースの治療を受けていた。
主要エンドポイント評価は135例(66例、69例)が完了した。結果、卵巣機能不全が認められたのは、ゴセレリン群8%、化学療法単独群22%であった(オッズ比:0.30、95%信頼区間[CI]:0.09~0.97、両側p=0.04)。
主要エンドポイントデータの欠測のため感度分析を行ったところ、結果は主要所見と一致するものであった。欠測データについて、治療群別や、年齢、予定されていた化学療法レジメンといった層別化因子による差はなかった。
評価可能であった218例の患者について、妊娠した女性はゴセレリン群のほうが化学療法単独群よりも有意に多く(21%vs. 11%、p=0.03)、無病生存率(p=0.04)、全生存率(p=0.05)についてもゴセレリン群が有意に高かった。