心血管系に起因する高齢者の死亡リスクを予測するために、スウェーデン・ウプサラ大学のBjorn Zethelius氏らは、確立したリスク因子の他に、異なる疾患経路に複数のバイオマーカーを加えることの有用性を検討。心血管だけでなく腎の異常についてのバイオマーカーも加えると、心血管系の死亡リスクの層別化が改善されると報告している。NEJM誌2008年5月15日号より。
高齢男性対象に腎不全と炎症のマーカーも追加
高齢男性を対象とした地域ベースのコホート研究である「ウプサラ成人男性縦断研究」(ULSAM)のデータを使い、参加者1,135例(ベースラインの平均年齢71歳)について、追跡調査(中央値10.0年)を行った。心筋細胞傷害、左室機能不全、腎不全および炎症を反映するバイオマーカー(それぞれトロポニンI、N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド、シスタチンC、C反応性蛋白)の組み合わせが、すでに確立している心血管疾患のリスク因子(年齢、収縮期血圧、降圧剤使用の有無、総コレステロール、高比重リポ蛋白コレステロール、脂質降下剤使用の有無、糖尿病の有無、喫煙状態、肥満度指数)に基づく評価より、個人のリスク層別化を改善するかどうかを検討した。
心血管疾患の有無にかかわらずリスク予測を改善
追跡調査の間に1,135例中315例が死亡し、うち136例は心血管疾患による死亡だった。
確立したリスク因子で補正したコックス比例ハザードモデルでは、すべてのバイオマーカーが、心血管系の原因による死亡リスクを有意に予測した。前記の4バイオマーカーを、確立したリスク因子のモデルに組み込むと、C統計量は、全コホート(バイオマーカー有:0.766対バイオマーカー無:0.664、P<0.001)でも、ベースラインで心血管疾患を有していなかった661例のグループ(同0.748対0.688、P = 0.03)でも、有意に上昇した。
モデル識別とキャリブレーション、全体的適合性など他の統計的尺度で推定した場合でも、バイオマーカー追加によるリスクアセスメント改善は強く支持された。
Zethelius氏らは、高齢男性は一般的な心血管疾患の有無にかかわらず、心血管と腎異常に関するいくつかのバイオマーカーを同時に追加すると、確立したリスク因子だけに基づくモデルより、心血管系の原因による死亡リスク層別化を大きく改善すると結論している。
(武藤まき:医療ライター)