閉経後の非浸潤性乳管がん(DCIS)の術後の再発予防において、タモキシフェン(商品名:ノルバデックスほか)とアナストロゾール(同:アリミデックスほか)のQOL(身体機能、心の健康)に差はないが、薬剤関連症状には違いがみられることが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のPatricia A Ganz氏らが実施したNSABP B-35試験で示された。2002年に本試験が立案された時点のDCISの標準治療はタモキシフェンの5年投与であったが、同年、ATAC試験により、浸潤性乳がんの術後補助療法ではアナストロゾールがタモキシフェンに比べ無病生存期間を延長し、毒性も良好であることが明らかにされた。NSABP B-35試験では、最近、60歳未満の患者においてアナストロゾール5年投与による無乳がん期間の、わずかだが有意な改善効果が確認されている(非浸潤性乳管がん、アナストロゾールの再発予防効果を確認/Lancet)。Lancet誌オンライン版2015年12月10日号掲載の報告。
約1,200例で5年投与期間中のQOLを評価
NSABP B-35試験は、閉経後DCISの再発予防(局所、領域、遠隔部位、対側乳房)におけるタモキシフェンとアナストロゾールの効果を比較する二重盲検無作為化第III相試験(米国国立がん研究所[NCI]などの助成による)。
対象は、乳房温存術+全乳房照射療法を受けたエストロゲンもしくはプロゲステロン受容体陽性の閉経後DCIS女性であった。
被験者は、タモキシフェン(20mg/日)またはアナストロゾール(1mg/日)を5年間投与する群に無作為に割り付けられた。また、ベースラインおよびその後は6ヵ月ごとに5年間、QOLに関する質問票に回答した。
主要評価項目は、SF-12の身体機能と心の健康のスコアおよび血管運動症状(Breast Cancer Prevention Trial[BCPT]の症状スケール)とした。副次評価項目は、膣症状および性交機能であった。
2003年1月6日~2006年6月15日に北米の333施設に3,104例が登録され、このうち1,193例(タモキシフェン群:601例、アナストロゾール群:592例)でQOL評価が行われた。5年時まで質問票への回答を完遂したのは、それぞれ393例、380例だった。60歳以上が54%、52%含まれた。
タモキシフェンで相対的に血管運動症状が不良、膣症状は良好
身体機能の平均重症度スコアは、タモキシフェン群が46.72点、アナストロゾール群は45.85点であり、有意な差は認めなかった(p=0.20)。心の健康はそれぞれ52.38点、51.48点であり、やはり有意差はみられなかった(p=0.38)。
SF-36の活力スケールのエネルギー/疲労(58.34 vs.57.54点、p=0.86)および疫学研究用うつ病尺度(CES-D)によるうつ状態(6.19 vs.6.39点、p=0.46)にも有意な差はなかった。
血管運動症状(1.33 vs.1.17点、p=0.011)、排尿制御困難(0.96 vs.0.80点、p=0.0002)、婦人科症状(0.29 vs.0.18点、p=0.0001)は、タモキシフェン群で有意に重症度が高かった。
一方、筋骨格系の疼痛(1.50 vs.1.72点、p=0.0006)および膣症状(0.76 vs.0.86点、p=0.035)は、アナストロゾール群で有意に重症度が高かった。
認知機能(0.89 vs.0.92点、p=0.72)、体重問題(1.15 vs.1.17点、p=0.48)、性交機能(43.65 vs.45.29点、p=0.56)は、両群間に有意な差はなかった。
60歳未満の患者は60歳以上に比べ、血管運動症状の重症度スコア(1.45 vs.0.65点、p=0.0006)、膣症状(0.98 vs.0.65点、p<0.0001)、体重問題(1.32 vs.1.02点、p<0.0001)、婦人科症状(0.26 vs. 0.22点、p=0.014)が不良であった。
著者は、「60歳以上の女性では両薬剤の効果は同等であり、薬剤の選択は重篤な有害事象(血栓塞栓症、子宮がん、骨量減少)や薬剤関連症状のリスクのほか、患者の好みを考慮して決めるべきである。一方、60歳未満では、効果がより良好なアナストロゾールを選ぶべきと考えられるが、血管運動症状や膣症状、婦人科症状などの副作用が耐容不能な場合はタモキシフェンに変更するのがよいだろう」と指摘している。