臨床試験結果の公表率と報告率、大学病院間で差/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2016/02/29

 

 米国51の大学病院について、臨床試験結果の普及啓発(公表と報告)について調査した結果、実施状況は非常に低調で、大学病院間のばらつきもかなりみられるという。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のRuijun Chen氏らがClinicalTrials.gov上で断面調査を行い明らかにした。主要大学病院でみると、完了臨床試験の2年以内の論文化による公表率は29%にとどまり、ClinicalTrials.govにおける結果報告率に至っては13%であったという。著者は、「大学病院には課せられた使命とミッションがある」と指摘したうえで、エビデンスベースの臨床方針決定を蝕む恐れがあると警鐘を鳴らし、タイムリーな報告と公表の不足を補う仕組みづくりが必要だと述べている。BMJ誌オンライン版2016年2月17日号掲載の報告。

ClinicalTrials.gov上で断面調査、普及啓発(公表・報告)率を調査
 臨床試験結果をタイムリーに報告することは、試験参加者への責務として、また研究事業を前進させ、臨床治療を向上させていくために必須とされているが、これまでに大学病院におけるその取り組み姿勢については明らかになっていない。限定的だが、先行研究で、25~50%の論文が完了後(ときに数年経過後も)未公表のままであるというデータも示されており、大学所属研究者による試験公表・報告の行動力は、最適にはほど遠いとされていた。

 そこで研究グループは、ClinicalTrials.gov上で、米国大学病院について断面調査にて、試験完了後2年以内の結果の公表率および報告率を調べた。対象期間は、2007年10月~10年9月。結果について普及啓発がなされていると認められた試験(公表またはClinicalTrials.gov上での報告を、全調査期間中または2年以内に確認)の割合を主要評価項目とした。

普及啓発率は全体で66%、2年以内は35.9%
 検索により、51の大学病院による、4,347例の介入臨床試験を特定した。そのうち、登録被験者が1,000例以上であった試験は1,005例(23%)、二重盲検試験は1,216例(28%)、第II~IV相試験は2,169例(50%)であった。

 全体で、大学病院の結果の普及啓発率は66%(2,892試験)で、2年以内では35.9%(1,560試験)であった。

 2年以内の普及啓発率については大学間でばらつきがみられ、16.2%(メリーランド大学6/37試験)から55.3%(ミネソタ大学57/103試験)にわたっていた。また、2年以内の公表率は、10.8%(ネブラスカ大学4/37試験)から40.3%(イェール大学31/77試験)にわたり、報告率は1.6%(スローン・ケタリング記念がんセンター2/122試験)から40.7%(MDアンダーソンがんセンター72/177試験)にわたっていた。

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コメンテーター : 折笠 秀樹( おりがさ ひでき ) 氏

統計数理研究所 大学統計教員育成センター 特任教授

滋賀大学 データサイエンス・AIイノベーション研究推進センター 特任教授

J-CLEAR評議員

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