インパクトファクターが高い総合医学雑誌の原著論文で筆頭著者が女性である割合は、20年前に比べ有意に増加したものの、近年その増加は横ばいで、逆に減少している雑誌もあるという。米・Baylor Scott & White HealthのGiovanni Filardo氏らが、高インパクトファクターの総合医学雑誌6誌を調査し、明らかにした。米国および英国の研究者に限定した先行研究2件で、1970年以降、女性筆頭著者の割合は増加しており、2004年で米国は29%、英国は37%と報告されていたが、医学雑誌間で比較した検討はこれまで行われていなかった。BMJ誌オンライン版2016年3月2日号掲載の報告。
6誌の原著の女性筆頭著者の割合、20年の変化と雑誌間の差を評価
研究グループは、Annals of Internal Medicine、Archives of Internal Medicine、BMJ、JAMA、Lancet、NEJMの6誌を対象に、1994年2月~2014年6月の偶数月に発行された号(1ヵ月に複数号発行される場合は、2番目の発行号)の原著論文について、発行年月、筆頭著者の性別、総著者数、研究の種類、専門分野/テーマ、研究実施地域に関するデータを収集し、多変量ロジスティック回帰モデルを用いて、女性筆頭著者の割合とその経時的変化および雑誌間差を評価した。
女性筆頭著者の割合は全体で10%増加し2014年は37%
対象論文3,860本中、3,758本において筆頭著者の性別が特定でき、このうち1,273本、34%が女性筆頭著者であった。
多変量解析の結果、女性筆頭著者の割合は、6誌全体では1994年の27%から2014年は37%まで有意に増加した(p<0.001)。
ただし、雑誌別に検討すると、NEJMは女性筆頭著者が減少しており、異なる傾向がみられた。BMJも近年は女性筆頭著者の割合が減少しているが、もともと他誌よりその割合が高く(1994年で約40%)、調査期間全体で女性筆頭著者の割合が最も高かったのはBMJであった。6誌の全平均と比較し筆頭著者が女性である補正オッズ比は、NEJMが0.68(95%CI:0.53~0.89)で有意に低く、BMJは1.30(95%CI:1.01~1.66)で有意に高かった。
著者は、分類の誤り、あるいは研究の種類や規模等により出版が優先された可能性など、今回の検討の限界点を示したうえで、「高インパクトファクターの総合医学雑誌においていまだに女性筆頭著者が少ないことも、雑誌間で差がみられることも、非常に大きな問題である。女性が、将来の保健医療政策や臨床診療の標準化のエビデンス確立に貢献できるよう、この問題の根底にある原因を調査する必要がある」とまとめている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)