羊水過多および一過性の出生前バーター症候群の発症に、変異遺伝子MAGED2が関連していることが明らかにされた。MAGED2は、悪性黒色腫関連抗原D2(MAGE-D2)をコードし、X染色体に位置していた。ドイツ・フィリップ大学マールブルクKamel Laghmani氏らが、重度の羊水過多と早産合併例が一家系の男児3例の妊娠で認められた症例について、その発端家族構成員2人のDNAを解析し明らかにした。NEJM誌2016年5月12日号(オンライン版2016年4月27日号)掲載の報告。
多症例の家系家族員のDNAをエクソーム解析
対象となった一家系男児3例の妊娠例では、1例は胎児死亡、残る2例は出生前バーター症候群を想起させる一過性の大量の塩類喪失と多尿がみられた。バーター症候群はX染色体上の遺伝子の異常により生じる。
研究グループは、症例の分子的原因を明らかにするため、発端家族構成員2人のDNAの全エクソーム解析を行った。また、同家系の別の構成員2人と、罹患男児がいる6つの家系についても分析を行った。さらに、男児妊娠で特発性羊水過多を呈した女性集団についても評価。免疫組織化学的解析、ノックダウン・過剰発現の実験、およびタンパク質間相互作用の検討を行った。
全例でMAGED2変異を同定
一過性の出生前バーター症候群がみられた新生児13例について、解析の結果、全例で
MAGED2変異が同定された。
MAGED2は、悪性黒色腫関連抗原D2(MAGE-D2)をコードし、X染色体に位置していた。
また、特発性羊水過多を呈した2つの家系で、異なる2つの
MAGED2変異を同定した。
周産期死亡例は4例、生存は11例であった。初発症状は既知のタイプの出生前バーター症候群よりも重症であり、羊水過多および陣痛が早期に発生した。すべての症状は、生存出生児では、フォローアップの間に自然消失した。
研究グループの検討は、MAGE-D2は、Na-Cl共輸送体のNKCC2およびNCC(遠位尿細管の塩類再吸収のキー要素)の発現および機能に影響を及ぼすことを示唆するもので、その機序としておそらく、アデニル酸シクラーゼ、サイクリックAMP(cAMP)シグナル伝達と細胞質内熱ショック蛋白を介することが示唆されたという。
結果を踏まえて著者は、「MAGE-D2は胎児の腎臓での塩類再吸収、羊水の恒常性、妊娠の維持に重要であることが判明した」とまとめている。