米国医師の年収について、男性医師では人種間(白人と黒人)に有意な格差がみられる一方、女性医師では人種間に有意差はみられないが、全体的に男性医師よりも有意に低いことが、米国ハーバード・メディカル・スクールのDan P Ly氏らによる断面サーベイ調査の結果、明らかにされた。結果について著者は、「さらなる検討を行い、これらの格差が、就業機会の格差によって生じているのかを調べる必要がある」と提言している。米国社会では、黒人と白人の経済格差がみられるが、医師に関する人種間格差については限定的な推察にとどまっていたという。BMJ誌オンライン版2016年6月7日号掲載の報告より。
全米医師を対象にした2つのサーベイで分析
調査は、全米の代表的なサンプル医師を含んだ2000~13年全米コミュニティ・サーベイ(American Community Survey:ACS)の対象者で、白人男性医師4万3,213人、黒人男性医師1,698人、白人女性医師1万5,164人、黒人女性医師1,252人。また、2000~08年保健制度改革研究センター(Center for Studying. Health System Change:HSC)のサーベイ対象医師で、白人男性医師1万2,843人、黒人男性医師518人、白人女性医師3,880人、黒人女性医師342人であった。
主要評価項目は年収で、ACS対象者については年齢、労働時間、調査年、居住状況を補正して算出。HSC医師サーベイ対象者については、年齢、専門分野、労働時間、調査年、診療経験、診療タイプ、メディケア/メディケイドからの収入が占める割合を補正して算出し、評価した。
白人と黒人の男性医師の年収差は6万ドル、男性と女性の年収差は10万ドル
白人男性医師は、黒人男性医師よりも、年収中央値が有意に高かった。一方で、女性医師の収入中央値について、人種との関連性は一貫して認められなかった。
具体的には、ACS対象者では、白人男性医師の補正後年収中央値は25万3,042ドル(95%信頼区間[CI]:24万8,670~25万7,413ドル)であったのに対し、黒人男性医師は18万8,230ドル(同:17万844~20万5,616ドル)であった(差:6万4,812ドル、p<0.001)。
一方、白人女性医師は16万3,234ドル(95%CI:15万9,912~16万6,557ドル)で、黒人女性医師は15万2,784ドル(同:13万7,927~16万7,641ドル)であり、有意な差はなかった(差:1万450ドル、p=0.17)。
10万ドルは、換算すると約6万9,000ポンド(8万9,000ユーロ)である。格差のパターンについて、HSC医師サーベイ対象者で専門性や診療特性で補正して調べたが、変化はみられなかった。