電子カルテの導入で短期入院患者のアウトカムは変わるか?/BMJ

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2016/08/12

 

 病院の新規の電子カルテシステム導入は、短期入院患者のアウトカムに影響を与えないとする所見を、米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のMichael L Barnett氏らが、同導入17病院を対象に行った観察研究の結果、報告した。これまでに質とコストに関する長期的な検討は行われていたが、多面的に短期影響に注視した検討はほとんどなかったという。BMJ誌オンライン版2016年7月28日号掲載の報告。

導入前後の死亡率、再入院率、有害事象発生を分析
 研究グループは、入院患者への電子カルテシステム(EHR)の導入とアウトカム(死亡率、再入院率、安全性に関する有害イベント)の関連を評価した。2011~12年に導入稼働日が確認できた米国内17病院のメディケア被保険入院患者のデータと、対照群として、同一地域にある紹介先病院の患者のデータも収集して分析した。

 主要評価項目は、退院後30日以内のあらゆる再入院、および入院後30日以内の全死因死亡と、メディケアの患者安全指標(PSI-90)で定義した有害事象の発生で、試験対象病院について導入前(2万8,235例)と導入後(2万6,453例)について調べ、また対照群(導入前28万4,632例、導入後27万6,513例)と比較した。
 解析は、社会人口統計学的特性および臨床的特徴を調整して行われた。

死亡率、有害事象は有意差なし、再入院率は未補正分析では有意に低下
 EHR導入前後の患者特性は、試験対象群、対照群ともに類似していた。

 試験対象群において、補正前30日死亡率は導入前6.74、導入後7.15%(p=0.06)、患者安全関連有害事象は1,000入院当たり導入前10.5件、導入後11.4件(p=0.34)で、有意な変化はみられなかった。未補正30日再入院率は、有意な減少が認められた(導入前19.9%から19.0%へ、p=0.02)。

 ただし、difference-in-differences解析の結果、導入前後のあらゆるアウトカムに有意な変化は認められなかった(すべてのp≧0.13)。

 これらを踏まえて著者は、「EHR導入は、短期入院の死亡率、患者安全、再入院とネガティブな関連は認められなかった」と結論している。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)