早産児に対する非侵襲的人工換気療法について7つの戦略を比較した結果、非侵襲的サーファクタント投与(less invasive surfactant administration:LISA)戦略が最良であることが示された。カナダ・マックマスター大学のTetsuya Isayama氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果、月経後年齢36週時点の複合アウトカム(死亡と気管支肺異形成[BPD])の尤度が同戦略で最も低かったという。ただし結果について著者は、「全体的にエビデンスの質が低く、質の高い試験での裏付けに乏しく、所見は限定的なものである」と述べている。JAMA誌2016年8月9日号掲載の報告。
7つの戦略の比較検討をシステマティックレビューとメタ解析で
研究グループは、早産児に対する最良の非侵襲的人工換気戦略を明らかにするシステマティックレビューとメタ解析を行った。比較検討したのは7つの戦略で、(1)経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)、(2)挿管・サーファクタント投与の直後に抜管(INSURE)、(3)LISA、(4)非侵襲的間欠的陽圧換気(IPPV)、(5)ネブライザーによるサーファクタント投与、(6)ラリンゲアルマスクエアウェイでのサーファクタント投与、そして(7)機械的人工換気であった。
MEDLINE、EMBASE、CINAHL、Cochrane CENTRALを創刊から2016年6月まで検索。在胎期間33週未満、誕生24時間以内、無作為化前の挿管なしの条件を満たす新生児で、換気戦略の比較が行われていた無作為化試験を選択した。2人の独立レビュワーがデータを抽出し、ベイジアン・ランダム効果ネットワークメタ解析法で統合し評価した。
主要アウトカムは、月経後年齢36週時点の死亡またはBPDの複合であった。主な副次アウトカムとして、死亡、BPD、重症脳室内出血、エアリーク(退院前の気胸または間質性肺気腫を含む)を評価した。
LISAの主要アウトカムの発生オッズ比が最も低値
検索により、30試験5,598例が解析に組み込まれた。主要アウトカムの発生は、33%(1,665/4,987例、死亡:505例、BPD:1,160例)。副次アウトカムは、6%(エアリーク、314/5,587例)から26%(BPD、1,160/4,455例)の範囲にわたった。
機械的人工換気(対照)との比較において、LISAの主要アウトカムの発生オッズ比が最も低値であった(オッズ比[OR]:0.49、95%信用区間[Crl]:0.30~0.79)。1,000新生児当たり164例(95%Crl:57~253)減少の絶対リスク差(RD)が認められた(エビデンスの質は中等度)。BPD(OR:0.53[同:0.27~0.96]、絶対RD:133例[同:9~234]減少、エビデンスの質は中等度)、重症脳室内出血(OR:0.44[同:0.19~0.99]、絶対RD:58例[同:1~86]減少、エビデンスの質は中等度)も低値が認められた。死亡(OR:0.52)、エアリーク(OR:0.34)は、エビデンスの質が低かった。
経鼻的CPAP単独(対照)との比較においても、LISAの主要アウトカムのオッズ比が最も低値であった(OR:0.58[同:0.35~0.93]、絶対RD:112例(同:16~190)減少、エビデンスの質は中等度)。エアリークのORは0.24(同:0.05~0.96)、絶対RDは47例(同:2~59)減少であったが、エビデンスの質は非常に低かった。BPD(OR:0.61)、死亡(同:0.61)もエビデンスの質が低く、重症脳室内出血(同:0.43)のエビデンスの質は非常に低かった。
ランキング確率の解析の結果、SUCRA(surface under the cumulative ranking curve)値が0.85~0.94でLISAが最良の戦略であることが示された。ただし、質の高いエビデンスが限定的で、死亡については確固としたことはいえないとしている。