英国レスター大学ヘルスケアサイエンス部門のClare L Gillies氏らは、2型糖尿病の4つのスクリーニング戦略について費用対効果を検証し、コストおよび臨床的な有益性に資する要素について検討した。その結果、高リスク患者(耐糖能異常)へのスクリーニング+治療介入という戦略に費用対効果が望めるようだと報告した。BMJ誌2008年5月24日号(オンライン版2008年4月21日号)掲載より。
4つのスクリーニング戦略の費用対効果を検討
比較検討されたのは、(1)早期発見と治療を目的に行われる1回限りのスクリーニング、(2)耐糖能(IGT)検査を行い異常が認められた者には糖尿病の発病予防および遅延のため生活改善指導を行うというスクリーニング戦略、(3)(2)に薬物療法を加えた戦略、(4)特に何も行わない(no screening)。4つの戦略について、スクリーニングから死亡までの介入を想定したモデル解析によって費用対効果の検討が行われた。
想定モデルの母集団は、45歳時にスクリーニングを受けた者で以後(45歳以上)に糖尿病発病リスクを有する者。文献データベース、補足ソースとしてイングランド-ウェールズ保健省、STAR(screening those at risk)study、ADDITION studyのレスター大学分も加えたデータソースから、臨床試験および疫学研究を取り集めて解析が行われた。
効果があるのはIGT患者を見いだし治療を行うこと
解析は、各スクリーニング戦略の長期的な臨床効果および費用効果を検討するために開発された複合型デシジョンツリー/マルコフモデルによって実施。50歳時点で年3.5%の費用対効果を得ていると仮定するモデルを用い、感受性分析で最も大きな影響を及ぼした要因の同定が行われた。
結果、QALY(生活の質で調整した生存率)を得るために各戦略が要したコスト(対no screening)は、(1)14,150ポンド(17,560ユーロ、27,860ドル)、(2)6,242ポンド、(3)7,023ポンド。
2万ポンドを投じた場合に各戦略が費用対効果を得られる確率は、(1)49%、(2)93%、(3)85%であった。
この結果を踏まえGillies氏は、「費用対効果があるスクリーニング戦略は、IGT患者を見いだし治療を行うことのようだ」と結論。スクリーニングの回数およびコンプライアンス、治療コンプライアンスは結果に影響しないとも述べている。ただし、耐糖能異常が見つかった場合で治療を行わなかった戦略の費用対効果は定かではないので、その点も含めさらなる長期の検証が必要だとも述べている。