高齢者の足関節骨折にはギプスか? 手術か?/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2016/10/21

 

 不安定型足関節骨折の高齢患者において、close contact casting(ごく少量のパッドを用いた成形型膝下ギプス)は、外科手術と比べて6ヵ月後の機能予後が同等であり、高齢者に適した治療法である可能性が示唆された。英国、ジョン・ラドクリフ病院のKeith Willett氏らがAnkle Injury Management(AIM)試験の結果、報告した。足関節骨折は高齢者に多くの病的状態を引き起こすが、外科的固定術は感染症や他の回復中の合併症が課題となっていた。JAMA誌2016年10月11日号掲載の報告。

60歳以上の不安定型足関節骨折患者620例を、手術群とギプス固定群に無作為化
 AIM試験は、英国の主要な外傷センターおよび総合病院24施設で実施された、無作為化評価者盲検同等性比較試験であった。予備的試験が2004年5月に開始され、その後2010年7月~2013年11月に本試験が行われた(追跡調査は2014年5月に終了)。対象は、60歳以上の急性不安定型足関節骨折患者620例で、重篤な四肢虚血や末期患者、重度認知障害患者は除外した。手術群とギプス固定群に1対1の割合で無作為に割り付け、ギプス固定は訓練された外科医が全身または脊髄麻酔下で手術室にて実施した。

 主要評価項目は、6ヵ月時のOlerud-Molander Ankle Score(OAMS:0~100で点数が高いほど良好な転帰で症状が少ない)で、同等性のマージンは±6点とした。また、副次評価項目はQOL、疼痛、足関節可動域、移動能力、合併症、医療資源の利用(手術時間、在院日数、調査期間中のケア)、患者満足度とした。

ギプス固定群の6ヵ月時の機能予後は手術群と同等
 無作為化された620例(平均年齢71歳、女性74%)中、593例(96%)が試験を完遂し、579例(93%)が割り付けられた治療を受けた。ギプス固定群の275例中52例(19%)は、その後、骨折整復早期管理のためにギプス固定治療経過中に許可されていた外科手術に変更された。

 6ヵ月時において、足関節機能はギプス固定群と手術群で同等であった(OMASスコア:手術群66.0[95%CI:63.6~68.5] vs.ギプス固定群64.5[95%CI:61.8~67.2]、平均差:-0.6[95%CI:-3.9~2.6]、同等性p=0.001)。感染症および創離開は手術群のほうが多く(29/298[10%] vs.4/275[1%];オッズ比[OR]:7.3[95%CI:2.6~20.2])、治療関連合併症に対する手術室での追加施術も同様であった(18/298[6%] vs.3/275[1%];OR:5.8[95%CI:1.8~18.7])。

 ギプス固定群では、レントゲン上の骨折変形治癒が多く(38/249[15%] vs.8/274[3%];OR:6.0[95%CI:2.8~12.9])、手術室で要した時間が手術群より少なかった(平均差[分/患者数]:-54[95%CI:-58~-50])。他の副次評価項目(QOL、疼痛、可動域、移動能力、患者満足度)に、有意差は確認されなかった。

 著者は研究の限界として、外傷後関節炎などの長期的転帰が不明であること、試験期間中での外科医ごとのclose contact casting症例数に限りがあることなどを挙げている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)