椎間関節、仙腸関節、椎間板を源とする慢性腰痛患者を対象とした3つの無作為化臨床試験において、標準運動プログラムと高周波熱凝固法(RF)の併用では、標準運動プログラム単独と比較して、慢性腰痛の改善または臨床的に重要な改善のどちらも確認されなかった。オランダ・エラスムス大学医療センターのJohan N. S. Juch氏らによる無作為化試験「Mint」の結果で、著者は「椎間関節、仙腸関節、椎間板が源の慢性腰痛の治療にRFを用いることは支持されない」と結論している。RFは、慢性腰痛の一般的な治療として用いられているが、有効性に関する質の高いエビデンスは不足していた。JAMA誌オンライン版2017年7月4日号掲載の報告。
疼痛源で分けて、有効性をRF+運動プログラム併用と運動プログラム単独で比較
Mint(Cost-Effectiveness of Minimal Interventional Procedures for Patients with Chronic Low Back Pain)試験は、脊柱関連の慢性腰痛患者に対する最小限の介入治療について評価することを旨とした研究で、3つの多施設共同実用的非盲検無作為化試験を、オランダの疼痛専門クリニック16施設で実施した。登録期間は2013年1月1日~2014年10月24日で、慢性腰痛を有し、診断的神経ブロックで椎間関節が陽性(椎間関節試験251例)、仙腸関節が陽性(仙腸関節試験228例)、または椎間関節・仙腸関節・椎間板のうち1つ以上が陽性(複合試験202例)であり、対症療法に反応がなかった患者を対象とした。
被験者を、標準運動プログラム+RF併用群(介入群)または標準運動プログラム単独群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。なお全例が標準運動プログラムを3ヵ月間受け、必要であれば精神的サポートを受けた。RFは通常1回であるが、本試験では最大3回施行した。
主要評価項目は、介入開始3ヵ月時点の疼痛強度(0~10の数値的評価尺度:0は痛みなし、10は考えられる中で最悪の痛み)で、事前に定義された臨床的に重要な差の最小値は2点以上とした。最終追跡調査は12ヵ月時点で実施され、2015年10月に終了した。統計解析は、intention-to-treat解析で行われた。
RFの有効性は確認されず
計681例(平均年齢52.2歳、女性421例[61.8%]、ベースラインの平均疼痛強度7.1)が無作為化され、このうち3ヵ月後および12ヵ月後の追跡調査を完遂したのは、それぞれ599例(88%)、521例(77%)であった。
3ヵ月時点の介入群と対照群の疼痛強度の平均差は、椎間関節試験で-0.18(95%信頼区間[CI]:-0.76~0.40)、仙腸関節試験で-0.71(95%CI:-1.35~-0.06)、複合試験で-0.99(95%CI:-1.73~-0.25)であった。
なお著者は研究の限界として、異なるRFの手技が用いられたこと、非盲検試験であったこと、診断的神経ブロック閾値の問題、心理的問題のある患者を除外したこと、対照群の一部の患者は介入期間の3ヵ月が過ぎた後にRFを受けていたこと、仙腸関節試験は脱落が多かったこと、複合試験では介入群でRFを受けていない患者がおりデータ欠損も多かったこと、多重比較の調整を行わなかったことを挙げている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)