米国では2003~15年までに、根治的腎摘出術に占めるロボット支援下施術の割合が1.5%から27.0%へと大幅に増加したが、合併症の発生率増加との関連はみられなかったことが明らかになった。一方で、ロボット支援下根治的腎摘出術は腹腔鏡下根治的腎摘出術に比べ、手術時間が長く、いわゆるホスピタルフィーの病院コストの増大と関連していた。米国・スタンフォード大学のIn Gab Jeong氏らが、米国内416ヵ所の病院を対象に行ったコホート試験の結果で、JAMA誌2017年10月24日号で発表された。
術後合併症の発生率や医療資源の使用を比較
研究グループは2003年1月~2015年9月にかけて、米国内416ヵ所の病院で行われた根治的腎摘出術について、Premier Healthcareデータベースを用いて後ろ向きコホート試験を行い、ロボット支援下根治的腎摘出術と腹腔鏡下根治的腎摘出術の実施率やアウトカムについて分析した。
主要アウトカムは、ロボット支援下根治的腎摘出術の実施傾向だった。副次アウトカムは、JCOG術後合併症規準(Clavien-Dindo分類)による周術期合併症の頻度、医療資源の使用(手術時間、輸血量、入院日数)、病院直接経費(direct hospital cost)だった。
90日間の病院直接経費の平均値、ロボット支援下で約2,700ドル高額
被験者数は2万3,753例で、平均年齢は61.4歳、男性は58.1%だった。そのうち、腹腔鏡下根治的腎摘出術例は1万8,573例、ロボット支援下根治的腎摘出術例は5,180例だった。ロボット支援下根治的腎摘出術の割合は、2003年には2,676件中39件と1.5%だったのに対し、2015年には3,194件中862件と27.0%に増加した(傾向のp<0.001)。
重症度を問わないあらゆる術後合併症(Clavien-Dindo分類で1~5)の発生率は、加重補正分析において、ロボット支援下根治的腎摘出術22.2%、腹腔鏡下根治的腎摘出術23.4%と有意差はなかった(差:-1.2%、95%信頼区間[CI]:-5.4~3.0)。重度合併症(Clavien-Dindo分類で3~5)の発生率も、それぞれ3.5%と3.8%で有意差はなかった(同:-0.3%、-1.0~0.5)。
一方、手術時間が4時間超だった施術例の割合は、腹腔鏡下群25.8%に対し、ロボット支援下群は46.3%と有意に高率だった(リスク差:20.5%、95%CI:14.2~26.8)。
90日間の病院直接経費の平均値も、腹腔鏡下群1万6,851ドルに対し、ロボット支援下群は1万9,530ドルとより高額だった(差:2,678ドル、95%CI:838~4,519ドル)。その主な要因は、手術室経費(腹腔鏡下群:5,378ドル、ロボット支援下群:7,217ドル、差:1,839ドル、95%CI:1,050~2,628ドル)、手術用備品経費(それぞれ3,891ドル、4,876ドル、差:985ドル、95%CI:473~1,498ドル)にあった。室料・食事代、薬剤費は、ロボット支援下群が低額だったが有意差はなかった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)