心不全で入院した患者は、退院後も死亡率と再入院率の高いことはわかっているが、入院中のQRS波持続時間による予後予測については、これまであまり検討されていない。そこで、米国ノースウエスタン大学医学部(シカゴ)のNorman C. Wang氏らは、左室駆出率(LVEF)低下に伴う心不全の入院患者のQRS幅と予後の関係について検討し、「QRS幅延長は、高い退院後死亡率の独立因子である」と報告している。JAMA誌2008年6月11日号より。
南北アメリカ、欧州の2,962例を分析
検討は、LVEF 40%以下の心不全入院患者を対象としたイベント駆動二重盲検無作為化プラセボ対照試験「Efficacy of Vasopressin Antagonism Heart Failure Outcome Study With Tolvaptan」(EVEREST)のデータに基づく遡及的解析。
2003年10月7日~2006年2月3日にかけて、南北アメリカ、ヨーロッパの359施設で登録された患者4,133例のうち、登録時にペースメーカーや埋込型除細動器を装着していた1,029例、およびベースラインのQRS幅が報告されなかった142例を除外した2,962例が分析された。
このうち1,641例はQRS幅正常(120ms未満)、1,321例はQRS幅拡大(120ms以上)だった。
主要エンドポイントは全原因死亡率と、心血管死亡と心不全による再入院の組み合わせとした。
QRS幅正常群よりも拡大群は、死亡率、再入院率ともに悪化
中央値9.9ヵ月の追跡期間中、全原因死亡率は、ベースラインのQRS幅正常群は18.7%、QRS幅拡大群は28.1%だった(ハザード比:1.61、95%信頼区間:1.38~1.87)。
心血管死亡または心不全再入院は、QRS幅正常群は32.4%だったが、拡大群では41.6%だった。QRS幅拡大がリスク上昇に関連することは、全原因死亡率でハザード比1.24、心血管死亡または心不全再入院で同1.28で、ともに確認された。
ベースラインでQRS幅拡大群だった患者で、入院中の最終心電図でQRS幅正常に戻ったのは105例(3.6%)のみだった。
QRS幅拡大は、LVEF低下による心不全入院患者に一般的に見られるが、Wang氏は「QRS幅拡大は、高い退院後死亡率と再入院率の独立予測因子である。これを介入の潜在的目標とすれば、退院後の死亡率、再入院率を改善できる可能性がある」と結論した。
(朝田哲明:医療ライター)