全米プロフットボールリーグ(NFL)に所属していたプロ選手のうち、「正規」の選手と、臨時に採用され競技期間が短かった「代替」選手を比較した結果、引退後の死亡リスクには差がないことが、米国・ペンシルベニア大学のAtheendar S. Venkataramani氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2018年2月1日号に掲載された。アメリカンフットボールのプロ選手の寿命に関するこれまでの研究では、一般集団に比べ死亡率が低いことが示されているが、職業的な運動選手と一般集団では生理学的特性などが大きく異なるため、選択バイアスの影響を受けている可能性が示唆されていた。
正規選手と代替選手の死亡リスクを後ろ向きに比較
研究グループは、アメリカンフットボールのプロ選手の引退後の死亡リスクをレトロスペクティブに評価するコホート研究を行った。
1982~92年にNFLにデビューした、すでに現役を引退している元選手3,812例を対象とした。このうち2,933例が正規の選手で、残りの879例は1987年のNFL選手会によるストライキ中に臨時に採用された代替選手であった。
主要アウトカムは、2016年12月31日の時点での全死因死亡とした。Cox比例ハザードモデルを用い、出生年、BMI、身長、競技ポジションで補正して、22歳から死亡(または試験終了)までの年数を正規選手と代替選手で比較した。死亡日や死因の情報は、米国のNational Death Index(NDI)およびウェブベースの情報源で確認した。
より長期のフォローアップで、有益な情報の可能性
正規選手(2,933例)のNFLデビュー時の平均年齢は23.2歳(SD 1.2)、引退時年齢は27.6歳(3.9)、試験終了時年齢は52.7歳(3.2)であり、代替選手(879例)はそれぞれ24.2歳(1.8)、24.9歳(2.2)、54.2歳(1.9)であった。また、正規選手のNFL在籍期間中央値は5シーズン(IQR:2~8)、フォローアップ期間中央値は30年(27~33)であり、代替選手はそれぞれ1シーズン(1~1)、31年(30~33)だった。
フォローアップ期間終了時に、正規選手の144例(4.9%)、代替選手の37例(4.2%)が死亡していた(補正絶対リスク差:1.0%、95%信頼区間[CI]:-0.7~2.7、p=0.25)。正規選手の、代替選手との比較における死亡の補正HRは1.38(95%CI:0.95~1.99、p=0.09)と、統計学的に有意な差を認めなかった。
正規選手で頻度が高かった死因は、心血管代謝疾患(51例、35.4%)、交通事故外傷(20例、13.9%)、予期せぬ外傷(15例、10.4%)、新生物(15例、10.4%)であった。また、代替選手の主な死因は、心血管代謝疾患(19例、51.4%)、自傷行為または対人暴力(5例、13.5%)、新生物(4例、10.8%)だった。
著者は、「イベント数が少ないことから、より長期のフォローアップを行うことで、有益な情報が得られる可能性がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)