医学雑誌編集者国際委員会(ICMJE)は、投稿論文にデータ共有計画の記載を求めており、医学ジャーナルのBMJとPLOS Medicineは、ランダム化対照比較試験(RCT)の出版の条件として、データ共有を明確に求める強固な指針を示している。米国・スタンフォード大学のFlorian Naudet氏らは、これら2つのジャーナルに掲載されたRCT論文を調査し、データの入手可能性は十分とはいえないが、データの共有が可能であった場合は、再解析のほとんどで、元論文の結果がほぼ再現されたと報告した。研究の成果は、BMJ誌2018年2月13日号に掲載された。
データ入手可能性と解析の再現性、問題点を検討
研究グループは、全データ共有指針を有する医学ジャーナルに掲載されたRCT論文により、データ共有の有効性を評価し、主要アウトカムの再解析の実施過程で直面する可能性のある問題点の記述を目的とする調査を行った(研究助成は受けていない)。
医学データベース(PubMed、Medline)を検索して、データ共有指針を採択後のBMJおよびPLOS Medicineに掲載されたRCT論文を選出した。
主要アウトカムはデータの入手可能性とし、「当該RCTの主要アウトカムの再解析に、十分な情報を提供するデータの最終的な受領」と定義した。また、再現性を評価するために主要アウトカムの再解析を行い、問題点を記述した。
2013~16年に発表されたRCT論文37編(BMJ:21編、PLOS Medicine:16編)が適格基準を満たした。
データ共有率46%、十分ではないが他に比べ良好
全37編のサンプルサイズ中央値は432例(IQR:213~1,070)であった。26編(70%)は企業の助成を受けておらず、25編(67%)は欧州の研究チームの論文で、12編(33%)が感染症関連論文であり、20編(54%)が薬物療法、9編(24%)が複合的介入(精神療法プログラム)、8編(22%)はデバイスの評価を行うRCTの論文であった。
37編中17編(46%、95%信頼区間[CI]:30~62)がデータ入手可能性の定義を満たし、このうち14編(82%、95%CI:59~94)は再解析で主要アウトカムが完全に再現された。再現性が不完全だった3編のうち、1編は「方法」の情報が不十分で、2編はエラーがみつかったものの再解析の結論は元論文とほぼ同様であった。
再解析の過程でみられた問題点としては、「元論文の著者との連絡が困難」「元論文の著者がデータセットを提供する際の時間と財源の欠落」「研究グループ間でデータ共有の方式が大きく異なる」などが挙げられた。
著者は、「2つのジャーナルのデータ入手可能性は十分ではないが、46%というデータ共有率は他の生物医学文献に比べ良好であった」とし、「意味のあるデータの再解析や再利用を可能とするには、データ共有の方式をもっと受け入れやすく、合理的なものにする必要がある」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)