前向きに計画された無作為化試験(RCT)の“living”ネットワークメタ解析は、従来のペアワイズメタ解析と比べて、治療効果の差に関する帰無仮説を実証(強いエビデンスを提供)できる可能性が20%高く、それまでの期間は4年早いことが示された。スイス・ベルン大学のAdriani Nikolakopoulou氏らによる実証研究の結果で、BMJ誌2018年2月28日号で発表された。ネットワークメタ解析は、多数の治療効果のエビデンスについて直接的・間接的に比較可能な従来のメタ解析の機能を拡充したものである。また、標準的なペアワイズメタ解析よりも、治療効果の比較における帰無仮説に関して、速やかかつ強固なエビデンスの提供が可能なことが示されていた。さらに最近になって、逐次解析法に基づく、前向きに計画されたRCTのlivingネットワークメタ解析が開発され、エビデンスを連続的にアップデートできるようになっていた。
帰無仮説に対する強固なエビデンス提供について比較
研究グループは、livingネットワークメタ解析が、従来のペアワイズメタ解析よりも薬物療法のエビデンス比較において、強固な帰無仮説のエビデンスを早く提供するかどうかを調べるため、臨床介入効果の比較に関する蓄積エビデンスを用いた実証研究を行った。
2015年4月14日時点のMEDLINE、Embase、Cochrane Database of Systematic Reviewsを検索して、2012年1月以降に発表され、5つ以上の治療を比較しており、20本以上のRCTを包含していたネットワークメタ解析を特定。臨床専門家に依頼し、各ネットワークで最も臨床的に重要性のある治療比較を同定した。また、直接比較および間接比較のエビデンスが一致しないもの、z検定(Separate Indirect from Direct Evidence:SIDE、node splitting testとも呼ばれる)のp値定義が0.10未満であったものは除外した。
選択された比較それぞれに関して、ペアワイズメタ解析およびネットワークメタ解析を累積的に実施。統計的有意性の監視境界(monitoring boundary)を規定し、監視境界がクロスした場合を帰無仮説エビデンスが強いとみなした。有意性の定義は、α=5%、検出力90%(β=10%)で、予想される治療効果がネットワークメタ解析からの最終推定値と同等である場合とした。そのうえで、帰無仮説に対する強固なエビデンスの出現頻度と出現までの期間について、ペアワイズメタ解析とネットワークメタ解析を比較した。
ネットワークメタ解析のほうが有意に多く早い
44のネットワークから重要性があるとされた49件の比較が包含された。最も多かったのは実薬間の比較で(39件、80%)、主として心臓病、内分泌系、精神科、リウマチに関するものであった。直接的および間接的エビデンスの両方によって特徴付けられた比較は29件(59%)、間接的エビデンスによる比較は13件(27%)、直接的エビデンスによる比較は7件(14%)であった。
ネットワークおよびペアワイズメタ解析の両方が、強固な帰無仮説エビデンスを提供した比較は7件(14%)であったが、さらに10件(20%)の比較について、ネットワークメタ解析のみが強固な帰無仮説エビデンスを提供した(p=0.002)。
同エビデンス提供までに要した時間中央値は、livingネットワークメタ解析が19年、livingペアワイズメタ解析は23年であった(ハザード比:2.78、95%信頼区間[CI]:1.00~7.72、p=0.05)。
強固なエビデンスを提供した17件の比較のうち8件(47%)は、ネットワークメタ解析で強固なエビデンスが明らかになった後に、直接比較の試験を発表するために継続された。
これらの結果を踏まえて著者は、「前向きに計画されたlivingネットワークメタ解析は、livingペアワイズメタ解析よりも速やかに帰無仮説に対する強固なエビデンスを提供し、タイムリーな勧告を容易なものとし、不要な試験を減らすことが可能である」と述べている。
(ケアネット)