先発医薬品(branded drug products)からオーソライズド・ジェネリック医薬品(authorized generic drug products)へ切り替えた患者は、先発医薬品からジェネリック医薬品(generic drug products)への切り替え例に比べ、先発医薬品への再切り替えの割合が低いことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のRishi J. Desai氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2018年4月3日号に掲載された。ジェネリック医薬品は、先発医薬品と有効成分は同じだが、外観や賦形剤が異なる後発薬であり、オーソライズド・ジェネリック医薬品は、先発医薬品を開発した製薬企業が製造したジェネリック医薬品であるため、両者は有効成分、外観、賦形剤が同じである。先発医薬品とジェネリック医薬品の外観、賦形剤の違いは、ジェネリック医薬品への否定的な見方に寄与する可能性があり、先発医薬品への逆戻りは医療費の増大を招くという。
オーソライズド・ジェネリック医薬品切り替え患者の先発薬への再切り替え状況
研究グループは、先発医薬品から、オーソライズド・ジェネリック医薬品に変更した患者またはジェネリック医薬品に変更した患者が、再び先発医薬品に変更する割合を比較する観察的コホート研究を行った(米国食品医薬品局[FDA]の助成による)。
解析には、2004~13年の米国の民間保険(大規模な商業医療保険)の加入者(プライマリ・コホート)と、2000~10年の公的保険(メディケイド)の加入者(再現コホート)のデータを用いた。
8つの試験薬(アレンドロン酸錠、アムロジピン錠、アムロジピン/ベナゼプリル・カプセル、サケカルシトニン点鼻スプレー、エスシタロプラム錠、glipizide徐放錠、キナプリル錠、セルトラリン錠)のうち1つの先発医薬品投与を受け、ジェネリック医薬品の上市以降にオーソライズド・ジェネリック医薬品またはジェネリック医薬品に切り替えた患者を同定した。これらの患者を追跡し、先発医薬品への再切り替え状況を評価した。
Cox比例ハザードモデルを用いて、年齢、性別、暦年で調整したハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推算した。逆分散法によるメタ解析を行い、全医薬品の補正後HRを統合した。
オーソライズド・ジェネリック医薬品は再切り替え発生率が28%低下
サケカルシトニン点鼻スプレーについてはサンプルサイズが不十分であったため、再切り替えの解析からは除外した。先発医薬品から、9万4,909例がオーソライズド・ジェネリック医薬品に、11万6,017例がジェネリック医薬品に切り替えていた。
再切り替えの補正前発生率は、医薬品によってばらつきがみられ、100人年当たりアレンドロン酸錠の3.8から、アムロジピン/ベナゼプリル・カプセルの17.8までの幅が認められた。全医薬品における再切り替え発生率は100人年当たり8.2(発生の率比:0.83、95%CI:0.80~0.87)だった。
プライマリ・コホートにおける補正後再切り替え発生率は、先発医薬品からオーソライズド・ジェネリック医薬品に切り替えた患者が、ジェネリック医薬品への切り替え例に比べ28%低かった(統合HR:0.72、95%CI:0.64~0.81)。再現コホートでも、ほぼ同様の結果が観察された(0.75、0.62~0.91)。
著者は、「先発医薬品への逆戻りを防ぐには、患者-医療者間のコミュニケーションを改善する介入を行って、質、安全性、有効性に関する先発医薬品とジェネリック医薬品の同等性の認知度を上げることが、きわめて重要と考えられる」とし、「先発医薬品とジェネリック医薬品の外観を一致させることも、先発医薬品への逆戻りを防ぐ手立てとなる可能性がある」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)