年少者の注意欠陥多動性障害(ADHD)には興奮剤が有効で、患者の60%~70%を効果的に治療できるが、多くの親は代替療法を求める。米国では植物性薬品(ハーブ)が人気だが、その中でセント・ジョーンズ・ワート(セイヨワートギリソウ=Hypericum perforatum)は使用されるハーブの上位3つに入る。補完代替療法を主体とするバスティア大学(アメリカ)のWendy Weber氏らは、ADHD治療におけるセント・ジョーンズ・ワートの有効性と安全性を検討し報告した。JAMA誌2008年6月11日号より。
54例に二重盲検プラセボ対照試験
本研究は2005年3月から2006年8月までの間、ADHDの基準「精神疾患の分類と診断の手引第4版(DSM-IV)」を満たした6~17歳のボランティア患者54例を対象に、無作為二重盲検プラセボ対照試験が行われた。
被験者は、1週間のプラセボ同時投与の後8週間にわたり、H perforatum300mg(ヒペリシン0.3%)を毎日3回服用する群(n=27)と、同量のプラセボ投与を受ける群(n=27)に無作為に割り付けられた。試験期間中、ADHDのための他の薬物投与は禁じられた。
主要評価項目は「ADHD Rating Scale.IV」(範囲:0~54)と「Clinical Global Impression Improvement Scale=臨床全般印象尺度」(範囲:0~7)の成績と有害事象。
試験期間中に、プラセボ群の患者1人が、有害事象のため試験を中止した。
症状改善、副作用ともに有意差なし
ベースラインから第8週まで、H perforatum投与群とプラセボ群の間でADHD Rating Scale.IVスコアの変化に有意差はなかった。不注意症状の改善ではH perforatum群が2.6ポイント(95%信頼区間:4.6~0.6ポイント)、プラセボ群3.2ポイント(5.7~0.8ポイント)だった(P=0.68)。
また多動症状の改善では、H perforatum群1.8ポイント(3.7~0.1ポイント)、プラセボ群2.0ポイント(4.1~0.1ポイント)だった(P=0.89)。
「Clinical Global Impression Improvement Scale」による改善基準(スコア2)を満たした参加者の比率でもH perforatum群(44.4%)とプラセボ群(51.9%)に有意差はなかった(P=0.59)。
研究期間中に有害事象を経験した参加者の数でも、H perforatum群(40.7%)、プラセボ群(44.4%)で違いはなかった(P=0.78)。
「有意差はみられず、H perforatumが症状を改善されすることはなかった」と結論付けている。
(朝田哲明:医療ライター)