航空機(飛行機またはヘリコプター)から飛び降りる際、パラシュートを使用しても死亡または重大な外傷は減少しない。米国・ハーバード大学医学大学院のRobert W. Yeh氏らが、無作為化試験「PARACHUTE試験」の結果を報告した。パラシュート使用の有効性を検証する初の無作為化試験であるが、実はこの試験、地上で静止している小さな航空機から飛び降りるもので、著者は、「介入の有効性に関して、無作為化試験を信頼していると、今回のような意図的な試験を行うこともできる」と述べ、「そういうわけで、結果を臨床診療に当てはめられるのか慎重に評価する必要があると示唆された」ことを試験の教訓としてまとめている。BMJ誌2018年12月13日号(クリスマス特集号)掲載の報告。
パラシュート使用群と空のバックパック使用群に無作為化
研究グループは、2017年9月~2018年8月、自家用機または民間航空機の18歳以上の乗客92例について試験参加の有無に関するスクリーニングを行い、そのうち登録に同意した23例を、パラシュートを用いて航空機から飛び降りる介入群と、空のバックパックを用いて飛び降りる対照群に、非盲検下で無作為に割り付けた。
主要評価項目は、着地時の死亡または重大な外傷(外傷重症度スコア[Injury Severity Score]15点以上)の複合エンドポイントであった。
本試験の真の意味は?
対照群と比較し、介入群で死亡や重大な外傷の有意な減少は認められなかった(パラシュート群0% vs.対照群0%)。この結果は、複数のサブグループで一貫していた。
スクリーニングを受けたが登録に同意しなかった個人(非被験者)と比較して、試験への登録に同意した被験者は、有意に高度が低く(被験者:平均0.6m vs.非被験者:平均9,146m、p<0.001)、速度が遅い(同平均0km/h vs.平均800km/h、p<0.001)航空機に乗っていた。
これらの結果を踏まえて著者は、「本試験は、地上で静止している小さな航空機にのみ被験者を登録することが可能であり、本試験の結果を高高度からの飛び降りについて外挿することは慎重でなければならない」と述べている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)